スギノイチ

激動の1750日のスギノイチのレビュー・感想・評価

激動の1750日(1990年製作の映画)
2.5
中井貴一の映画だと思っていたら、途中から渡瀬恒彦の映画になっていた。

1990年公開のはずのこの作品は70年代どころか任侠時代に戻ったかのように古臭い。
チンピラが「バイク屋を継ぐ」とか言ってフラグを立てた直後に死んだシーンは鮮やかすぎてギャグの域だ。

一応、往年の実録路線っぽいシーンも無くはない。
歯の治療を受けている組長が女装したチンピラにメッタ刺しにされるシーンに始まる中盤の怒涛の殺し合いダイジェストは、確かに往年の実録路線の残り香を感じる。
ただ、そういうシーンでもやたらスローを多用しているのがダサい。今の時代に観ると余計に古臭い。
重要な人物であろうとも、ゴミの様にあっさり死ぬのが、70年代実録路線の今観ても新鮮な旨味なのに。
70年代ならば北大路欣也か渡瀬恒彦がやってそうな鉄砲玉を陣内孝則や加藤正也が演じているのは時代の経過を感じさせるが、「かっこいい美学」になり過ぎていて冷めてしまう。
陣内孝則の死に様なんてしらけるだけ。

そもそも、事件の発端は夏八木勲との跡目争いだったはずなのに、途中からそんなものは立ち消えて、いつのまにか渡瀬恒彦がオオトリになっている。
実際の抗争事件を基にしているから映画的な決着が着けられなかったのか?
終盤はもうとりあえず渡瀬恒彦の格好良さで引っ張り、勇ましい死に方をさせて無理矢理盛り上げている。
「この世界は、人の風下に立ったら終いじゃ。あいつらイワすまで、とことんやったる!」
格好良いからいいけど、映画の終盤は明らかにバランスが無茶苦茶。
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