ゆめちん

マイ・エンジェルのゆめちんのレビュー・感想・評価

マイ・エンジェル(2018年製作の映画)
3.5
マイ・エンジェル

フランス版 "フロリダ・プロジェクト" という感じですが、オレンジが協調されたポスターのイメージとは異なり、終始重い雰囲気を感じる作品でした。

"マリアンヌ" を鑑賞して以来のマリオン・コティヤール観たさと、シネコン全盛になってからは足が遠のいてしまいましたが、閉館する有楽町スバル座への感謝も込めて鑑賞しました。

8歳の娘エリーと共にその日暮らしの生活を送っていたマルレーヌは、結婚という幸せを手に入れるはずでしたが、自らの醜態が原因で破綻となり、突然エリーの前から姿を消してしまいます。

"存在のない子供たち"のように、"育てられないなら産むな"と、エリーに訴えられてもおかしくないくらい酷い母親のマルレーヌ。
母親の責任を果たすかのように留守電に残す "マイエンジェル愛してるよ" というメッセージが、あまりにも希薄に聞こえ、愛し方が分からないのではなく、愛が存在しないのだから、愛せるはずがないのだと思いました。

前半はマルレーヌのその酷い母親ぶりを徹底的に見せながら、エリーが孤独に追い込まれる様が丁寧に描かれ、中盤以降はエリー中心の描写となり、母親に対する想いが徐々に変化し、"ママは死んだの" と言い切る彼女の眼差しはあまりにも切なく心に刺さるものでした。

"フロリダ・プロジェクト" と決定的に違うのが、エリーには友達がいなく学校でもいじめられ、フリオが現れるまで心の拠り所がどこにもないところ。
そんなエリーを、8歳の子供の描写としては余りにも過激な演出で見せるのは、幼い子でも親の影響を受け、考えられない行動をとってしまう危うさを訴えたかったのか、ある意味新鮮に感じました。

愛を欲しながら、もがき苦しむエリーを演じたエイリーヌちゃん。主演と言っても過言でない、大人顔負けの演技に胸が詰まる想いでした。そんな彼女が言い放つ "親がいない子はゴミ箱行きなの" という言葉が、今も頭から離れません。

私的にはあまり希望が見えなかったラスト、そう感じる作品もたまにはいいかもしれませんが、ただただエリーが正しい大人になることを願わずにはいられませんでした。
ゆめちん

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