きりん

生きるのきりんのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.4
30年間無欠勤、事なかれ主義の模範的役人、市役所の市民課長である渡辺(志村喬)は胃ガンで余命幾ばくもないことを知る。絶望に陥った渡辺が生きることの意味を考え始める話。
東宝創立20周年記念映画。


悲壮感が漂うなかにガンの圧と顔の圧(一番は眼力)がすごい!この時代の胃ガンは死刑宣告と同じなのだ。ガンを宣告(と言っても胃潰瘍と医者からは言われる)されてから初めて自分の人生を見つめ直す渡辺。

今まで経験したことの無いお酒や娯楽に興じようとするも心ここに在らず。そりゃ死が迫ってるんですもの😭
そこに現れた同じ課の若い女性が退職届けに判子が欲しいとやってくる。バイタリティあるその姿を見たことでミイラであった30年を振り返り市民のために奔走する展開に。

役所に出された申請書類を真剣に目を通すと下水溜まりの埋め立てと公園建設に関する陳情書。責任を擦り付け合うように市役所内をたらい回しにされる市民。そこに描かれるは官僚主義への痛烈な批判。

渡辺が生きた証を話す通夜のシーンは官僚の戯言で胸糞なるも同僚の熱き想いでグッとくる。中盤から同僚たちの回想シーンで構成されているのも面白いし今観ても古さを感じないところが素晴らしい。

我々だっていつ死ぬかなんてわからない。今を全力で生きる!今は今しかない!そう思わせてくれる。

印象残るは“ゴンドラの唄”🎶を歌うシーン。胃ガン宣告後飲み屋で涙ながらに歌う時と最後ブランコに揺られながらの対比が素晴らしくて涙無しには観られない😭

生きることを哲学的に描く本作。やはり傑作だなぁ🥺
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