タケミ

ソウルフル・ワールドのタケミのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
3.0
2020年のクリスマス、思えばDisney +の最初のインパクトだった。
えっ、こんなすごい作品を劇場で公開せずに特定の動画配信サービスだけで見せるなんて。
Disney +は贅沢だ、すごい、と当時は思ったけれど、これは権力の悪用だったのかもしれない。
レッサーパンダを見たときにその思いは確信になった。観客は甘やかされていたのではなく機会を奪われていたのだ。暗がりの中で見知らぬ誰かとスクリーンの体験を共有する特別な体験を。

さえない黒人のおじさんを主人公にした物語は、音楽への愛に導かれて見事にふくらみ、ピクサーがたまに落ちこむ教条的なオチにもはまらず着地する。
肝となる音楽は、地上をあらわす温かみと偶然性に満ちたジャズパートをジョン・パティステ。神性と底知れない不穏なアンビエントのどうしてピフィンチャー組のトレント・レズナーとアッティカス・ロスが担当。適材適所。
ソウルの世界のキャラクターデザインは丸くチャーミングなのに温度感がない、という絶妙さ。もし劇場公開されていたら、22番のぬいぐるみを私たちも手にしていたかもしれない。そんな失われた可能性を考える。
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