ヤノ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェストのヤノのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

活劇とは何か教えてやるよと宣言するようなセリフほぼゼロの冒頭から鼻血が出そうだった。
はじめて観る描写のオンパレードだった。舞台となる町があらかじめ描写されるシーンで、『CHINESE LOUNDRY』という看板がちらっと見切れる。1800年代の西部開拓史時代のエル・パソでチャイニーズ? 気になっていたら、その後しばらくしてから店内のシーンがちゃんと用意されていて驚いた。アジア系の労働者たちが忙しく洗濯をする洗い場に、上のフロアからおそらく新しく洗うべき衣類が投げ落とされるといった作業風景が具体的に演出されていた。すごいと思った。自宅前でパーティーの準備を命じられている少女が、パンを自分の体に押し付けながらナイフでカットする様子も、まぁ観たことがなかった。蒸気機関車の車両内部の造形もことごとく具体的で、俳優たちがその車内設備をしっかり使いこなす。天井に張り巡らされた手すりとか停車ボタンの役割を果たす吊り紐とかマジはじめて観た。

西部劇でおなじみのはずの決闘シーンも、まあ普通こんな感じっしょ、で量産されるボケボケの模造品とは別物だった。一人はジャケットを脱ぎ捨てて銃を素早く取り出しやすい状況を作るのに対して、一人はガンホルダー側のジャケットの前見頃をひるがえすだけにとどめる。ガンマンのちょっとした決闘スタイルの個性がさりげなく表現されていてお洒落だ。くらいに思っていた。やがてシネマスコープサイズの横長スクリーンの左右にシンメトリーに、対立する二人のガンマンがぴたり立ち止まる瞬間。さっき一人が脱ぎ捨てたジャケットが手前にどっかり落ちている。ふたりのガンマン並みに画面に割り込んでいる地べたのジャケット。この映画を観たという人がいたら、このジャケットについてどう思ったか聞いてみようと思う。
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