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愛なき森で叫べのきのネタバレレビュー・内容・結末

愛なき森で叫べ(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「極端だから、人を惹きつける」とはこういうことか。胡散臭すぎるセリフや行動で人々をたちまち洗脳していく詐欺師・村田。

「いや、こんな人に騙されるわけ…w」と思っていたけど、実際に存在した人物と聞いて、唖然とした。自分の中では勝手にフィクションにしていたけど、これは”リアル”だったのだ。

「帰ってきた、園子温」と過去の作品のオマージュが散りばめられていることを絶賛する声もあるが、この作品には園子温監督の人生をとにかく詰め込んで煮込んで吐き出した映画としても見て取れる。

自分が卒業しきれていない家族との関係の破壊、初恋の女性ミツコの純粋さ、出会った詐欺師、ぴあフィルムフェスティバル、どれも監督の人生のカケラを反映しているのではないだろうか。

そして、相変わらずのパンチのある破壊と不快感はパワーを増している。今作では、セーラ服に黒髪の少女たちの処女性を「ヤリマン」というワードで破壊している。勝手に世間が抱く少女たちへのイメージを痛快にも破壊してくれる。決まり切った型なんて存在しないのだから。

さらに、目を背けたくなるような残酷なシーンもメガ盛り。予告にも出ていた通電棒への嫌悪感が渦巻く。「冷たい熱帯魚」でも登場するグロシーンが再び見れるかもしれないとだけ言っておこう。飛び散る血しぶきが言葉と引き換えに全ての感情を吐露してくれる。

少しだけネタバレになるが、死体解体後の男女が、何事もなかったかのように血で汚れた体をシャワーでキャッキャと洗うシーンがある。そこに、ある種の青春を感じてしまった私は、もうこの映画に洗脳されているのかもしれない。
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