クマヒロ

愛なき森で叫べのクマヒロのレビュー・感想・評価

愛なき森で叫べ(2019年製作の映画)
3.8
「映画の世界だったらなんだってできるんだよ。」
園子温監督の映画観を観れる作品。

観終わった直後はすっと解釈できずに、困惑した点も多く、あらが目立つなあとか思っていたが考えれば考えるほど解釈が広がる作品だった。

冒頭にまるで殺人を犯したことがあるかのように語る村田。そこに流れるテレビニュース。この時点で村田とシン、2人の関係性が示唆されているのが面白い。
実際に殺人をしているシン、画面越しにしかそれを見ていない村田。
最初からこの2人の関係性は決まっていたと思うと鳥肌が立つ。

村田の姿は実際の映画監督に重なるのかもしれない。
面白いものに積極的に近寄り、興味関心を注ぎ、あくまで当事者ではなく傍観者。それをどう切り取るか。
狂気に満ちたその姿は人から敬遠されることがあるかも知れない。

美津子と妙子にも、同じように当事者と傍観者のような関係性があり、実はお互い反対の性質を持ち合わせている。
かなり練られた構成であるように思う。

役者の演技も申し分なく、特に鎌滝えりさん、日南響子さんの演技には圧巻。
園子温監督は女性を映すのがうまい。

満島真之介の行動原理とか欲しかったなあ、とかも鑑賞直後は思ったが、冒頭から順を追って考えれば映画的で無い人間として、園子温監督が象徴的に描いているのでは、と考える。
インタビューではこのシンを自分に当てはめて考えていると監督自身が語っているのも興味深い。

映画というよりはドラマで長い時間かけてゆったりと解釈を広げたい作品。
テンポがいいというよりは編集のぶつ切り感をより強く感じてしまった。
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