YukiSano

アルプススタンドのはしの方のYukiSanoのレビュー・感想・評価

4.4
夢を「しょうがなく」諦めた全ての人へのプレゼント。

主役になれない人達が隅っこに追いやられて、「主役」を凝視する映画。まさにスポーツ版「桐島、部活やめるってよ」だが、ベクトルは真逆。まるで「スラムダンク」を読んだような読後感。

登場人物達の会話と目線から、人間関係と試合展開を想像する時、こちら側のあらゆる記憶と感情が掘り起こされ、観てないはずの試合に興奮し、喝采を送りたくなる。見事な脚本で、まさに演劇のための台本。

これを映像化する意味があるのか問いたくなったが、後半ついに熱を帯び始めた役者達の演技がカメラ目線になったり、大切な所でカメラワークがニクい演出をすることで心の機微を伝えてくる。こうやって演劇という生本番のものをパッケージ化する意味も、映像でクローズアップにして観客を見つめることで語りかける時に普遍化されたような気がするので、ありかもしれない。

最後、フィクションだからこその最高のクライマックス。嘘でも良い、それでも語ってほしかったことを言ってくれた作品。

姿の見えない「彼」は究極の助演男優賞だ。

最高級の青春の風を感じることができた。有り難う!
YukiSano

YukiSano