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アルプススタンドのはしの方のIdeonのレビュー・感想・評価

4.0
母校の野球部の試合の中程から、しぶしぶ応援に来た演劇部の安田と田宮、そこに野球部をやめた藤野が加わり、3人はアルプススタンドの端のほうに陣取る。さして野球に興味がない安田と田宮、野球部に屈折した想いを持つ藤野は、気の無い応援を続けていたが、会話が進むにつれて、それぞれが「しょうがない」で済ませていたことが、実はそうじゃないことに気づいていく…というお話。
高校演劇が原作ということで、野球の試合が舞台にもかかわらず、グラウンドにカメラが向くことは一切ない。舞台だったら当たり前だが、これは映画なのだから、真正面には捉えないにしろ、最後の反撃シーンはボールの行方ぐらいは見せても…という誘惑に駆られるに違いないのだが、この作品には見事にそれがない。アルプススタンドのはしの方に視点を据えることで、スポットライトの当たらなかった青春が浮かび上がってくる。低予算の早撮りで鍛えた城定監督の演出力が十二分に発揮されて、清々しい傑作が生まれている。
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