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ホドロフスキーのサイコマジックのumekoのレビュー・感想・評価

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クラウドファンディングの参加は出来なかったけれど去年からめちゃくちゃ楽しみにしていたホドロフスキーの新作をトリエンナーレ映像プログラムにて

(これはレビューでもなんでもなくて
アレハンドロ・ホドロフスキーへのラヴレター)

殻を破り、皮膚を剥ぎ捨て“わたし”という無意識の裸を昇華していくことで自我を解き放つ、ホドロフスキーが考案した癒しの処方箋『サイコマジック』

家族も、過去の取り巻く環境も、哀しみや苦痛も全て手放して、空に伸ばした両手で自分の中のひかりを集め、そして自分を思いっきり抱き締める
この行為はシンプルでいて、とても難しい

自我の解放というのは、周囲がぎょっとするほど凄まじく、滑稽なのだと思う
(私は解放というより破壊という言葉がしっくりくる)
けれどもその先に捉えるのは“わたし”という“存在の肯定”があり、同時にどれだけ自分自身で勝手に制圧した世界で生きているのかも気づかされる。

このドキュメンタリーは映画監督ではないホドロフスキーの一面も見れる作品だと思っていたけれど、
彼が創り上げてきた過去作自体がサイコマジックであり、全てが地続きにあるのだと、とても綺麗に腑に落ちました

重度の鬱を患う女性への処方では、
世界を通じて自身に“贈与”するという行為の優しさは過去の作品を想起させるし、
癌患者の治療の光景は、私の中でオカルト危険信号点滅しまくりなのだけど、
あの処方が成果を出したかは置いておいて、その後の穏やかな患者の表情を観てしまうと
ドラゴンボールの元気玉もあながち絵空事ではない気もするし、むしろ可能性を秘めてるのでは…なんて思ったり

ある友人が、宗教(=信じること)と哲学(=疑うこと)は相反するものだと言っていたけれど、
ホドロフスキーの作品や彼が見出した精神には、その2つが存在しているように思う。
いや、そのどちらにも属さずアレハンドロ・ホドロフスキズムを確立してるかな…?


どちらにせよ
ド級にクレイジーで、それでいてしなやかなで、生気溢れる精神の持ち主である彼の理解を深めることが出来るとても面白い作品でした
(実際吹き出すぐらい面白いしクレイジー過ぎてこちらが嬉しくなる)

改めて『リアリティのダンス』や『エンドレス・ポエトリー』を介して
サイコマジックという生への優しい抱擁を私たちに与えてくれたホドロフスキーにメルシー!グラシアス!って叫びたいし、めちゃくちゃ大好きだと伝えたい!


時間の概念すらも破壊してホドロフスキーは私たちに謳い続ける

よろこびを!
よろこびを!
よろこびを!



《これから観る方へ》
この映画自体は9/23をもって来年公開までは最後でしたが、名古屋市美術館でも同時に展示されているサイコマジックのセラピーを受けた患者が行った治療のその後ホドロフスキーに宛てた手紙(ホーリーマウンテン垣間見る)と治療映像の一幕等、トリエンナーレ期間中見れるので、時間がある方は来年公開までに見ておくのもおすすめです。
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