バンド「ECHOLL」は一年前死に至った〈ボーカル〉アキの幽霊と人付き合いが苦手な大学生の友情を描いた物語。ファンタジー要素を現実世界に取り込んだ物語だから内容が理解しやすくも世界観が真新しくて新鮮な感覚を得られた。作中に取り入れられてる楽曲はバンドミュージックで良質なものが多く心を掴む歌詞とメロディでストーリーテンポをちょうど良いものにしていた。視点は主人公である大学生がほとんどだったが、主人公が居ない場面ではバンド「ECHOLL」を客観的に映して彼らの青春と挫折を内側、外側の両方から捉えていた。
カセットテープを再生すると30分間アキが主人公に乗り移れるが、行っていくうちに乗り移れる時間が短くなっていく理由として「テープの思い出が上書きされているから」と発言していたが納得しきれなかった。アキはカセットテープにバンドの音楽を録音する中で思い出を詰めていたのは分かるが、何故テープの再生をしてるのに思い出が取り込まれていくのかが分からなかった。その点を置いといたとしても、主人公とバンド「ECHOLL」との音楽作りの思い出でアキが消えるとあるが、その音楽作りでは一番にアキがいたはず。何故新しい思い出にアキが存在してるのに上書きで消えると発言してるのか。アキの実体がないからか。しかし思い出というのは言葉通り、経験に対する思いの事で登場人物全員の心にアキがいたから乗り移れる30分間は短くならないはず。ファンタジーの世界だから矛盾点があっても仕方ないが、作りが少し雑に見えてしまう。
