マムトム太郎

ミッドナイト・トラベラーのマムトム太郎のレビュー・感想・評価

ミッドナイト・トラベラー(2019年製作の映画)
4.7
【※多少ネタバレ】アフガニスタンの映画監督が、自身の作品の内容を理由にタリバンから命を狙われるようになり、家族でヨーロッパ、ドイツへの亡命を計画。その道中を3台のスマホで撮影していくという当事者による斬新なドキュメンタリー。
小学生低学年くらいの娘2人と奥さんを連れていく旅路はあまりに過酷で唖然としてしまう。特に国境を密入国で越えようとする際、冬にもかかわらず4日も5日も雑木林の中、毛布一枚で隠れて野宿する辛さは想像に難くない。
一方で、そのような難民生活にも関わらず、日常の遊びのなかではしゃぐ娘たちは、日本で普通に目にする子どもたちと寸部も変わない存在であると思われ、その無邪気さと置かれている状況の乖離が見るものに生々しいリアリティを感じさせる。
亡命の過程で密入国エージェントに全財産を詐取され、初めて入国したヨーロッパのブルガリアでは移民排斥団体から集団攻撃を受け森での野宿に逃れるなど、亡命の道中は混迷を増していく。
なんとなくそういうことになるだろうなとわかっていたことだけど、改めて当事者による映像を見せられるとかなり衝撃を受ける。そういう作品だった。あ
ろくに寝る場所もない状態でもスマホとWiFiはあり、Googleマップで密入国の行程を確認したり、子どもたちはYouTubeでマイケルジャクソンのダンスを覚えたり、そのアンバランスさはとても現代的だと感じた。
行く先々で足止めを食らう家族。亡命生活は3年にも及び、未だ終わらない。その間、然るべき学校教育をまっとうに受けられない子どもたちの機会損失たるやいかほどのものだろう。
先進国である日本の難民受入数の少なさを考えると、この映画はもっと広く見れられるべきものではないだろうか。