しお

中村屋酒店の兄弟のしおのネタバレレビュー・内容・結末

中村屋酒店の兄弟(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

22歳の学生監督が初めて撮った映画としてちょっと考えられないクオリティですこれ。
ポスターの雰囲気だけに惹かれて見に行ったとはいえ、まさかこんな話とは思わかった、を45分の間に2回感じた。2回山が来る。話としては変わった話じゃないんだけどとにもかくにも役者が素晴らしいし、それを殺さない演出も素晴らしい。
余韻と行間を読ませる、素晴らしく好みの映画だった。

何かを言うとネタバレになりそうだから予告も見ないで行ってほしい。
ちょっと面白い構成で、冒頭にスピンオフドラマパート(いわゆるラジオドラマ、ドラマCDのような音声だけのパート)が突如始まるので最初はめちゃめちゃ戸惑うと思うんだけどここをいっそ目を閉じ、よく想像してから噛み締め本編に入ることで行間を読んだり、想像力を働かせる下地が整うのすごく面白い試みだと思った。おかげで本編見ながら普段より良く物を考えた。たとえば、兄が電話や口伝えの指示がうまくできないのはずっと一人でやってきて人に説明することが慣れてないからなのかなぁ、とか。
いろんなことをかんがえた。

フレッシュででもどこか影のある役を演じさせたら天下一品の藤原季節を弟、お名前からぱっとお顔は浮かばなかったのだけど見ると思い出す(ミセス・ノイズィの旦那だ!)長尾卓磨を兄に据えて、基本的にこの二人をメインにすこーし母親が出てくるくらい。
藤原季節がうまいのは知ってるじゃん。それが今回核になるくらい兄の長尾さんがうまく、驚いてしまった。突然帰ってきて好きなことを言う弟、ずっと世話をしてきたのに弟のことだけ覚えている母。兄は多くを語らないけれども感情に満ち満ちたひとであることが次第に明らかになってくる。
飲んで、母を車に乗せて連れ回した兄は自分のことも当たり前だけど呼んでほしかったに違いなく、ここでまず涙が出たし、喪服の二人が並ぶシーンでああーここがメインか、ああ……て思ったら、その後の急展開。
母を車に乗せて連れ回したあたりでもしや母に兄はなにか……?てちょいと不穏を感じたところで弟が帰ってきた理由が叩きつけられて、こっちだったのか!て愕然とするんですよ。帽子を焼く兄、それを見つける弟。兄と弟の駆け引きのような、ずっとぎこちなかったそれに家族でしかない愛情が絡んで、ラストのシーンが本当に泣ける。
良い映画でした。初日のトークショーもとても良かった。2回目も買い足したので楽しみにみます。素敵な映画に出会えて嬉しい。
しお

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