もじぱん

グレート・ハック SNS史上最悪のスキャンダルのもじぱんのレビュー・感想・評価

3.6
2016年大統領選、ブレグジットと国の分断を深めた事件の裏で、大きな役割を果たした選挙コンサル会社ケンブリッジ・アナリティカ社(CA社)の実態と、事件への関与を追求するドキュメンタリー。
関係者が自分の利益のためにあからさまな嘘をつく様は見ていて呆れるしかないが、この映画でわかることはほんの一角にすぎず、これもまた片寄った情報であることは否定できない。このドキュメンタリー自体を批判的な眼で見ることが重要だと感じた。
SNSの弊害が訴えられるようになって久しい。本作でもザッカーバーグがフェイスブックのデータをCA社に提供したことについて議会で追求される一幕があるが、フェイスブックは十分な責任を果たしていると言えるのだろうか。
CA社はフェイクニュースをSNS上に溢れさせ、浮動票を操作し、その手法を発展途上国で実験し、大国の選挙にも導入する。ネットメディアの操作は既に兵器と言っていいほど効果的な戦術で、ロシアが同様の手口でBLM問題に関与していることまで示唆されている。
ここまで効果的ならCA社とロシア以外の国・組織が使わないはずがない。CA社は倒産したが、その人材やノウハウは分散して存在するだろうし、今後もこの手法は巧妙になっていくのだろう。
我々にできることはとにかくリテラシーを高めることしかない。与えられた情報をただ鵜呑みにせず、この情報がどういう意味を持つのか?これによって利益を受けるのは誰か?ソースは確かか?常に疑っていなければならない。SNSをそもそも使わないことも最早一つの方法だろう。
本作は少々スローテンポな編集で、扱っているテーマが無機質だからか、情緒的な演出を入れるシーンも見られた。個人的には新たに得られた情報はあまり多くなく、情緒的な演出は解釈を偏向させる意図のように思えてしまうので蛇足に感じてしまった。その点が少し残念だが、こうした現代の重要なテーマを扱ったドキュメンタリーは非常に重要だと思う。
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