Hiroki

少年の君のHirokiのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.1
そろそろ昨年の公開作品のレビュー残しもやりきったかなーという所でこの作品を忘れてました。(実は2021のBEST作品を書いてないんですけどね…それはもうちょっと心の準備ができたら書きます。)

今作は中国映画です。
中国映画にして青春恋愛モノです。
中国では青春恋愛モノってのは人気がないらしくて、そのジャンルにおいて興収歴代1位(約240億円)との事。
240億円なので大ヒットと思いきや公開された2019年の中国国内9位らしいです。(ちなみに同年の日本1位は『天気の子』で約140億円です…)
中国市場おそろしや。

原作はチオユエシーの『少年的你,如此美麗』でこの作品実は盗作騒動があったんですよねー。
観た方なら気づいたかもしれませんが東野圭吾の『容疑者Xの献身』です。
原作は読んでいないので詳しくはわかりませんが、映画を観る限りでは盗作とはいえないかなー。同じような設定はあれどテーマとしている事と描き方がかなり違っているので。もしかしたらそこを外すように映画化したのかもしれないけど。
個人的には美女と野獣やロミオ&ジュリエットの匂いも少し感じました。
上手い事いろいろなお話の良い所をマッシュアップしている印象。

基本的には、優等生だけど他人とどこか違う感性で虐められてしまう少女チェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)と親無しチンピラのシャオベイ(イー・ヤンチェンシー ※英名:ジャクソン・イー)がひょんな事から出会い惹かれあっていく中でイジメや大学受験戦争、家族などの問題と対峙していく物語。
まーこれを聞くと普通に良くある話に感じる人も多いと思う。
今作はおそらく全く同じ話を日本やアメリカで撮ってもこんな良作にはならなかったのではないか。
世界一厳しいとも言われる中国の大学受験“高考(ガオカオ)”。
ほぼ国立大学しかない中国で大学に受かる事の意味。
共産主義国家において貧乏人や親のいない人間が大学に落ちる事の、そして犯罪者になる事の意味。
中国(架空の土地ではなく実在の中国が舞台)というバックグラウンドを通す事によって一つ一つの意味合いが変わってくる。
そんな中で出てくる、
「不公平な世の中で大学受験だけは公平。」
という言葉がとても強烈だった。
(ちなみに中国出身の知人によると実際は地元優遇や少数民族優遇などがあって完璧に公平ではない模様。)

そして共産主義国家では創作物は必ず検閲されるという事実もまた重要。
そーいえばこの間も『ファイトクラブ』が検閲によってラストが描き換えられて放映されたというニュースがありましたが…
そーいう中でこの反体制的な物語を作る事の意味。ラストのあれはギリギリこの物語を世に出すために必要な事だったのかもしれない。
中国や中東や様々な地域で色々な規制と戦いながら、それでもなんとかして映画を作っている人たちには頭が上がりません。

キャストは主演の2人がとても良いです。
“13億人の妹”チョウ・ドンユイがまず高校生役という事に驚愕。撮影時は26〜27歳くらいかな?全然高校生に見えてたけど。
イー・ヤンチェンシーは初見だったのですが、アイドルグループの人みたいですね。中国ではめちゃくちゃ人気があるらしい。
もーあの終盤の面会のシーンはみんな泣くでしょ。あの時の2人の表情がまた良い。
というかチョウ・ドンユイが普通の時は全然思わないんだけど、イー・ヤンチェンシーといる時だけ凄く可愛くて綺麗に見えるんですよねー。
これは凄いなーと思わず唸りました。

“中国の岩井俊二”ことデレク・ツァンは『ソウルメイト』に続いて長編監督2作品目。
俳優の時はそんなにイメージなかったけど。
まだまだ編集や撮影など少し物足りない部分も垣間見えますが、非常に良い作品撮っているのでこれからも注目です。

2022-12
Hiroki

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