フジタジュンコ

スーパー30 アーナンド先生の教室のフジタジュンコのレビュー・感想・評価

4.0
人はなぜ学ぶのか。自分を「ここ」から抜け出させてくれるのが「教育」しかないからだ。

アーナンドのもとで学ぶ学生たちの切実さは、北海道の田舎の貧しい家庭に生まれ育ちまさに教育を受けることだけが将来の希望で必死で勉強してきた私には痛いほどわかる。カーストも性別も関係なく、ただ、学ぶことさえできれば、望む暮らしができる(はず)。21世紀でこんな凄まじいモチベーションの連中と戦っていこうというんだから、若い日本人たち、しんどすぎるな。

私は実はフランス文学の博士課程を単位取得退学している。恐ろしいことに、私は英語はもちろんのこと、フランス語もまともに喋れないし聞けない(読み書きはちょっとできる)。これは日本がいかに文化的に豊かであるかの証左である。母国語(日本語)だけでも、博士課程まで教育が受けられるのだ。こんな国は非英語圏では日本くらいだろう。
この作品で描かれる学生たちは、英語がわからないと文献にすら触れられない。この作品も巨大な「英語」という敵を攻略しなければならなったという独白からはじまる。言葉すらも自分のものではない中で学びつづけなければならないのはどれほどの困難かと思う。学生たちによる英語での演劇は、これを痛々しいまでに表現している名シーンだった。

アーナンド先生と敵対するラッラン・シンの放った殺し屋たちへのホーム・アローン的逆襲や、30人全員がインド工科大学に合格してしまうなど、あまりにも脚色が過ぎるという批判もあろうが、このドラマチックさは映画として正解のように思う。