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アウシュビッツの会計係のonoyameのレビュー・感想・評価

アウシュビッツの会計係(2018年製作の映画)
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アウシュビッツにいたナチスドイツ親衛隊元隊員に対するドイツでの裁判に関するドキュメンタリーだが、本作はホローコストの戦犯がドイツでは長年裁かれにくかった実態や、半世紀以上前の犯罪を裁くことの意義を語っている。

半世紀以上前の殺人の従犯を裁くことはホローコストの罪を裁くだけではなく、現代における大量虐殺の罪に対しても意義を持つ。
ホローコスト以降も世界では大量虐殺や戦争犯罪が繰り返され、そしてそれらに関わった人々は罪から逃れ続けている。だが、本作の判決は殺人の従犯に時効はないことを示す。

本作の裁判では被告人が全面的にアウシュビッツでの出来事を認め、それどころか自発的に語ったことが注目されたようだ。
ホロコーストに関する裁判についてはいくつかの映画やドキュメンタリーを観たことがあったが、改めて知りたくなった。

個人的に気になった点は、ナチスドイツでは軍の命令に背いたことで重い体罰などを受けた兵士は一人もいなかったことだ。
ホローコストの多くの元看守は「命令に背けば自分が殺されていた」と語るが、実際にはそんなことはなかったのだ。
しかし、この事実は日本に住む私としては少しショックだ。なぜなら元日本軍における私刑という重い体罰は兵士らを疲弊させるどころか、精神疾患にまで追い込んだという記録さえあるからだ。軍隊における考え方がまるで違うのだろうな……。
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