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人生をしまう時間(とき)のsaikaのレビュー・感想・評価

人生をしまう時間(とき)(2019年製作の映画)
4.0
まとまらないので、つらつら備忘録。
小堀先生の著書死を生きた人びとを読んで、映画も観てみたいと思い鑑賞。
思った以上に死にゆく過程に踏み込んだドキュメンタリーであった。


市のイベントでの上映会であり、鑑賞者もほとんど高齢者の方ばかりだったが本来ならどの世代の人でも観て欲しい内容。
たしかに高齢者の看取りがメインではあるが、癌などの疾患による終末期医療に関しては高齢者に限らない。
このコロナ禍では緩和治療に関しても病棟面会が禁止され、在宅へ移行されるパターンも多くなってきていると思う。

どうしても治療や療養は病院で、という考え方が強い現代で在宅治療のリアルを知って欲しい。


私は医療者で、家に帰りたいといいながら亡くなる人を何度も看てきて、
病院治療での孤独さや延命治療の不必要さを感じて入院治療より在宅治療の方がいいのではないかと偏った考えを持ちがちだが、
家族にとって本人にとっての本当の正解なんてなんなのか正解はないことを著書や今作で考えさせられている。

介護はいつか終わりが来るものであるが、その終わりはいつかはわからない。
経済的にも体力的にも精神的にも
介護する側にもされる側にも負担はあって何もかもうまくいくことなんてない。
一般的に調整されて介護サービスも十分にいれて、正解だとされるところに近づけても本人にとっては居心地が悪かったりする。医療・介護の分野においてのマニュアルみたいなものって本当に意味がない。

人生の終わり方というものは本人と家族がよければなんでもよくて、その状態に穏やかなところまで手助けしてあげるのが私たち医療者の仕事なんだよなと感じた。

著書も素晴らしかったが、小堀先生の接し方も素敵だった。ちゃんと伝えなければいけないことはちゃんと伝える。
死ぬということはこうゆうことだと理解してもらえるように接することで亡くなった後に残された家族も思うことは全然違うだろうなあ。
堀越先生も小堀先生とはちがう態度なとこがあって、こんな2人に診てもらったら安心できるだろうなと感じた。

それにしても、亡くなる寸前までこれほどまでに近くで取材させてくれた家族、本人さんに感謝。
どうしても病床の患者や亡くなってしまった人の顔は写すのがタブーなところがあるけれど知らなくてはいけない事実であると思う。
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