くり

ブラック・レインのくりのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
3.9
かなり小さい頃にテレビで流れていたのを何となく見た程度。ぶっちゃけイロモノ的な要素のある作品だと思ってたけど、意外にもかなり真っ当に作られたクライム映画で驚いた!
もちろん80年代っぽい古さとダサさはありつつも、かなり楽しんで観ることができた。

そもそもヤクザの親分がマイケルダグラスに語る「ブラックレイン」というタイトルに込められた意味がなんとも深い。

敗戦国である日本はアメリカに対してかなりのコンプレックスを持っている。対してアメリカ人も日本や東洋に対して薄気味悪さを感じていたはずで(それがブレードランナーの近未来感がアメリカで受け入れられたことに繋がっていると推察)、更に80年代から90年代にかけては日本企業がアメリカに進出し、経済や文化が日本人に脅かされていたという時代背景がある。

そんななかで、日本人が大事にしてきた"義理人情"といわゆるアメリカ的な"自由主義"との折り合いは悪く、そのことを上手いバランスでストーリーに昇華し着地させているところが凄い。リドリースコット恐るべし。
"ブラックレイン(アメリカによる負の影響)"によって生み出された悪が佐藤(松田優作)だったとすると、アンディガルシアの末路が持つ意味がまた一段と深くなる。

だとすると、ラストのなんとなくのハッピーエンドは少し安直な気がする。もう少し救いが無いくらいの感じがあると傑作になってたように思うし、この作品が訴えるメッセージが際立ったかも。

とは言え凄く面白かった。高倉健と松田優作という役者さんの地肩の強さみたいなものも感じることができた。
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