このレビューはネタバレを含みます
3DCGにより本物の質感を纏った昔ながらのキャラクター達が、新しいテイストを作り上げたルパン三世 THE FIRST。見ていて自然と心が踊った作品。
2Dアニメと違ったダイナミックなカメラの動きに加え、崩れる壁や爆発の粉塵、海面などのリアルな仕上がりが、作品の映像に臨場感や立体感を加え、よりリッチに作品を楽しむことが出来た。実写映画を見るような繊細さがあった。
アニメーションは手付けだっという事で更に驚いた。確かにモーキャプ感がない。ルパンが第三の試練を潜り抜けるシーン等はしびれる格好よさがあった。全体的に、ルパン三世の独特な動き(歩き方や姿勢、表情、骨格含め)は、かなり再現度にこだわり作られていた印象だった。
唯一の残念なポイントをあげると、どうしても個人的には有名どころの俳優さん達を声優にあてるのがしっくりこない。藤原竜也のみ役を役としてみれたけど、他のかたは個が強すぎて、実物の俳優さん達の顔が浮かんでしまった。
他に本作で良かったのはふじ子。プロポーションから表情。声に性格。お宝にまっしぐらで、どこか天然さもあり、そして強くたくましくセクシー。自身が描いていたふじ子そのものが違和感なく3次元化されていた。
また本作では、フランス漫画(バンドデシネ)をコンセプトに色彩設計がされたそう。
元々の自然なキャラクターや背景の色味に加えて、アート的に色味を足してつくるカラフルな映像は美しく、3Dのリアルな質感と、ルパン独特の西洋的な世界観と相まって、新鮮で面白い味付けになっていたと感じる。おしゃれだった。
アニメーション制作を担当されたマーザさん。セガ系列という事で、過去にはソニックの実写化をハリウッド共同で行ったり、バイオハザードやキャプテンハーロックなど有名タイトルの3D化もしている。
3Dの可能性を今後も広げていってほしい。
※追記
山崎監督の作品、大衆受けを狙う作品と言う事で、本作はカリオストロの城の引用で多くを埋め尽くしてあり、そこがちょっと残念だった。どこかビジネス的な下心が見えてしまい、こういう作品作りでは、10年後、50年後に残るものにはならないんじゃないかと思ったというのが、大変恐縮ながら感じたところ。
ただ後で、白組さんについて書かれた本で山崎監督の考えを拝見し、印象が大きく変わった。
監督はエンターテイナーであり、制作者でもある。双方の守るべき部分を知り、顧客を楽しませ、制作面での予算を守り、チャレンジングさもだしながら、興行的にしっかりと当てること。
それが、このCG業界そのものにとっての、成功例を作り続けていくことに他ならず、働く環境としての還元になり、よりよい作品作りに繋がっていく。
その意味で、当てることの大切さを語られていた。
そうした考えを聞いて、自身の思慮の浅さを感じた今時分であった…。