ひな

劇場のひなのネタバレレビュー・内容・結末

劇場(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

こわくてこわくて、何度も観るのをやめてしまいたくなった。それでも、止めることなく、最後の一秒まで一気に観た。

中学生のとき、火花を読んだら、思っていたのとはぜんぜん違くて、苦しくて、でもおわりまで読んでしまった、あの感覚と同じだった。

みんな自分が大事で、でもこわくて、現実に向き合うのがこわくて、できなくて、先延ばしにして、人のせいにして、でも辞めたくはなくて、そういう気持ちが切に表されていた。

理解できないくらい、嫉妬深くて、自分のことだけが大事で、自分のことを大事にしてくれる人が大事で、でもその人のことを大事にするのは面倒で、そんな永田が心底嫌だった。

時間がとても長く感じて、1時間くらい観たあたりで、さきちゃんはなんでずっとこの人と一緒にいるんだろうと考えるようになった。さきちゃんも自分と向き合うのがこわくて、永田に依存していたことがわかった。でも永田に飲まれたし、向き合えなかったけど、自分のことが好きで居られなくなった。女にはタイムリミットがあって、夢が叶えられなくても、むしろ夢よりも、結婚や出産、安定した生活の方が大切で、永田のように同じ気持ちで生き続けることができなくなった。

自分の感情をころすこと、自分の感情に向き合わないこと、自分を傷つけるこわい人と居続けること、これらは本当に人をこわしてしまうことがわかった。

でも最後に、永田がさきちゃんのことを
大事にできなかったけど、
好きだったこと、一緒に過ごした時間がかけがえのないものだったと思っていることが伝わってきた。

チャリでさきちゃんと二人乗りをして桜を見たときから、それを永田が伝えるようになったが、その時はまだ、さきちゃんを失いたくない気持ちから来る部分も結構あったと思う。

けれど、最後の劇場のシーンでは、
失ったけれどさきちゃんがどうか幸せであってほしい、ごめん、ありがとう、というメッセージが伝わってきた。

最後までみて、良かったです。
心が痛すぎて壊れそうになったし許せない気持ちになったけれど、だからこそ、最後まで観てよかったです。

井の頭線沿いの町の夜、お散歩した事があるからこそ、感じるものもたくさんありました。
下北や高円寺はこういう町だよなぁと思ったり、東京女子図鑑では自分が知らない街だったけれどやっぱりあれはああいう街なんだろうなぁと思ったりした。

もう観られない気がするけれど、観てよかったです。原作の又吉さんの描写も読んでみたいです。
ひな

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