2020年公開『劇場』又吉直樹原作
行定勲がたっての希望で監督を務めた。
当方、原作は未読です。
夢を追い続けプライドばかり高く恋人に
依存するコミュ障気味の男と、その男に
依存されることに存在意義を見出す女の
関係が破綻するまでを描いた恋愛映画。
筋は使い古された陳腐なストーリーだが、
行定監督はクズ男と都合のいい妄想から
生まれた女を情緒的に描くのがうまい。
女側もクズを優しく包むだけではなく、
案外したたかな面も覗かせてみせる。
『世界の中心で愛を叫ぶ』『春の雪』
どちらも自己中で独りよがりな男に女が
振り回されるが、それだけで終わらない
松岡茉優の演技は安心して見られたが、
意外だったのが山崎賢人。どこまでも
自分本位でモラハラ気味でキレやすく
所有欲の強い徹底したダメ男を熱演。
無精髭にボサ髪&猫背でも見るからに
汚い印象を与えきれない素材の良さが
辛いが、本気で取り組んでいる様子は
伝わってきた。近年も良作に次々と
主演を決めているところ、ちょっと
若い頃の妻夫木聡を思い起こさせる。
演技力はまだまだだが、こんな作品に
果敢にチャレンジを続けてほしい。
映画自体は特に驚きも意外性もなく
いい話風に終わってしまい、うーん…
芥川賞作家の作品とは思えなかった。
キャラクターはずいぶん極端だし、
それでいてズシっとくる台詞もない。
原作は平凡だが、監督の力量で映画は
見られるものになったのではという
印象を持ってしまった。