春21号

劇場の春21号のレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.1
これは…

刺さりますね、自意識の爆発とそこに刺さる優しさの話というか…

観てる途中ずっと違和感があった。
どうして演劇の中身について踏み込まないんだ?と
劇団の話なのにどんな内容の劇をやっているかはボンヤリとしか伝わらない
一般受けしない前衛的な内容という事はわかるのだけどあらすじすらわからない…

で、観てく途中で気付いた。
この話別に劇団かどうかは関係ないのだと
創作という部分も関係ないと思う。
何かの世界でもがく途中で生まれる自意識の檻に囚われてしまう話なのだと
で、凄いのがその檻に囚われる事をまるで肯定してしまうかのような女神がこの話に居るという事だ。

観てる途中自分にも身に覚えがある部分があってお腹のあたりがよじれた。
俺にはあんな女神が居なかったから割とすぐにバキバキに折られたけど、肯定の悪魔が近くに居るとああなっていたかもしれない…

これはある一つの恋愛の話でもあるが確実に成長の過程の話である。怖いね
2人だけの甘やかされた世界って事じゃないか結局、とも思ったがそれこそが怖いんだという事をこの作品は言っているような気がした。
そしてそれはほんとその通りで世の中と折り合いをつけないと一歩も動けなくなるのだ。
最後その折り合いをつける片鱗の見せ方が良かった。
そういう所から始まるんだよなきっと

はい、相変わらずの行定演出でクドイ台詞にナレーションにと辟易してしまうところもありますがこの話にまずやられてしまいました。
これは誰しもに訪れ乗り越えなきゃ行けない話なんだよな
これまた行定さんらしい仕掛けがあるのですが正直僕はうーん
まさに世界が広がるという表現になっているのか?という感じであまり負に落ちませんでした。
てか演劇続けられるんだね、甘くね?

ただ主演2人の演技が凄かった。
ていうかほんと思いっきり2人の世界だったな
山崎賢人も関西弁はどうしても気になったけどあの鬱屈とした感じを違和感なくやらされてる感じなくてきていたし
イケメンなのに今すぐ殴ってやりたい鬱陶しさを見事に体現できていたと思う。
そして松岡茉優さん
いや、もともと凄いんだけどこの表現力を求められる役でまた一段と…
最初っから何かを溜め込んだ演技、いつ爆発するんだ?と彼女が映る度に緊張した。
存在そのものがサスペンス
そして一気に爆発するあの瞬間も見事
カメラの引き方もよかったですねあそこは
長引かせない

出番は少ないけど脇の寛一郎さんもよかった。キッチリメスを入れる。重要
伊藤沙莉さんも松岡さんとは別の暖かさを体現していた。
多分だけど伊藤さんと主人公つきあっとけばまだなんとかなったんじゃない?

過去回想の使い方や場面展開とか小説をなぞっているようにしか感じられない鈍臭いシーンもあるけどやっぱりこの映画というかお話すごく好きです。
身勝手なあまりにも身勝手な人生の瞬間を切り取った作品
刺さりました。
春21号

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