若者、青春、夢、恋、という題材にしては、薄寒さとか痛さみたいなものにクサみ消しが思ったよりも施されていて、観やすさが確保されていたので良かった。
主人公2人の出会いと別れに変な意味づけや伏線など張らず、淡白に起と結がまとめられている。ラストの別れのシーンも演出こそ派手ではあるが、引いて見ると行われていることは至ってシンプル。しかし、出会い方のパワープレイっぷりには引っかかりを感じた。
逆に物語の道中にキリキリとしたしんどさが滲み出ている。劇中、常に変化を見せる松岡茉優と一切動じない山崎賢人がカメラの中では交わえど、水と油のように融け合えずにいる。それにより、キャラクターのグラデーションが浮かび上がる。
その点で、いわゆる2人だけが理解し得る排他的な構造ではく、意識的に外に向けた演出がされていると感じた。彼女、松岡茉優の変化が観客とダメ男山崎賢人の架け橋の役割を果たして、ある程度観客が介入できるようにしてある。山崎賢人側と観客側にいい塩梅のバランスの気配りを演技の中で行う松岡茉優は、いろんな意味で手練れだなと感心する。
映画館での上映で意味を成す演出が後半にあり、配信で観た評価が一般的な総意とされてしまうのは残念だ。しかし、結果としてミニシアターと242カ国での配信になったことを踏まえると、日本の都市と空気感を実直に切り取った作品として評価されるのではないかと期待を込める。