劇場という映画を観た。
こちらは、又吉直樹さんの同名小説を実写化した作品。
劇場では、一つの恋の始まりから終わりまでが描かれている。
恋が終わってしまう理由は、きっと幾つもある。
本作で描かれているのは、そのうちの一つだ。
そもそも、ずっと一緒に居るということは本当に難しい。
少しずつ変わっていく人も居れば、いつまでも変わらない人も居る。
けれど時の流れは残酷で、本当の意味で「変わらない」という選択肢を僕らに与えてはくれない。
例えば「芯があってずっと変わらない人物」を時の流れは「いつまでも変われない人」に変えてしまう。
あの時だから好きでいられた。
今だって好きでいたい。
好きになった時のあなたのまま変わらないで欲しい。
けれど、この恋がずっと変わらないのは耐えられない。
本作で描かれているのは、そんな矛盾した人間らしい想いだ。
僕は、以前から又吉さんが好きで「東京百景」や「第二図書係補佐」など彼のエッセイは何度も読んだ。
その上で、おそらく「劇場」は彼の実体験から着想を得ている部分が多いような気がする。
僕が読んだエッセイの中に、彼の過去の恋愛に関するものがあった。
本作は、その話に似ていた。
松岡茉優さんが演じたヒロインの様な途方も無い優しさを持った女の子に、きっと彼は出会ったのだろう。