燦

劇場の燦のレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
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序破急的なリズム感の作品。

永田がプライドの高さとわがままで沙希を疲弊させていくさまに苛立つばかりで、なぜ沙希は永田と居続けるのかさっぱり理解できなかった。しかし、自活しない永田が沙希に頼りきっているのと同様、「夢を追う人を支えている」ことで沙希の気持ちが満たされていたとしたら、沙希もまた永田に寄りかかっていたのだろう。「俺(永田)が沙希にとっての東京だった」という言葉にも象徴されるようにふたりは「南瓜とマヨネーズ」のツチダとせいちゃんのような共依存の関係にあったのだと思う。

相手の幸せを望むことができない関係に愛はないであろうし、そもそもふたりの関係は恋愛なのか?

とは言いつつも、プライドの高さゆえに相手を傷つけてしまうのも相手の輝きにすがりたくなるのも、自分も持っている弱さなのだろうなと心が痛む。

「ここがいちばん安全な場所だよ」とふたりが寄り添いソファに沈むところが心に残っている。傷つきやすい東京という場所、上京してきて身寄りのないふたりの人間。心身をあたためて自分を守ることができる狭い部屋で寄り添い座る夜。ふたりの痛みが分かるような気がした。
わたしにもそんな日が来るのだろうか。わたしの上京生活が、再び始まろうとしている。
燦