燦さんの映画レビュー・感想・評価

燦

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書かれた顔 4Kレストア版(1995年製作の映画)

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杉村春子が微笑んだ口元を隠す扇を一枚ずつ閉じていくのを観たとき、「女形」が「女」でないのに似て、「女優」も「女」でないように思った。あのとき彼女の目は他の人を見ていなくて、見えない鏡にうつる自分の所作>>続きを読む

冬物語(1992年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「運命の人」が「運命の人」であり続けられることがうらやましいしわたしには分からないな、と観賞後に思っていたけど、再会した「運命の人」の方を結局は選ばない『寝ても覚めても』は『冬物語』のありえた別の結末>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

雨の日にタクシーで移動することしかできなかった主人公が、傘をさして東京を歩き、友だちを助手席に乗せて車を運転するようになる。原作者が同じ「ここは退屈迎えに来て」では、運転免許を持たず「誰でもいいんだけ>>続きを読む

空に聞く(2018年製作の映画)

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報道された震災は非日常そのものだったけれど、嵩上げが進む街でも暮らしは続いていく。あまりにも理不尽な出来事も、日常の中で引き受けられていく。埋め合わせようのない不在や欠如を抱えたまま、朝起きてご飯を食>>続きを読む

サイダーのように言葉が湧き上がる(2020年製作の映画)

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ありふれた郊外、どこにでもある退屈なはずのショッピングモールが色彩豊かにポップに描かれて、田んぼや山の稜線とともに固有のものとして立ち現れる。そこで躍動する少年少女。一度きりの大事な出会い。ドラマが生>>続きを読む

息の跡(2015年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

津波で店を失ったたね屋は復興をすすめる街で営業を再開したが、今度は嵩上げのために自分の手で店を壊すことになる。いちど失ってなんとか取り戻した(もちろん取り戻すことができたのはほんの一部で、かつて存在し>>続きを読む

春江水暖~しゅんこうすいだん(2019年製作の映画)

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エドワード・ヤンみたいな光の演出、長回し。ロングショットと長回しが連続する重厚な演出が山河の雄大さを強調させるため、借金や諍い、離別もすべて飲み込まれてしまうよう。まさに「国破れて山河あり」の境地だっ>>続きを読む

かもめ食堂(2005年製作の映画)

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隣にいる人物の過去を探ろうとはせずただ受け入れる。穏やかながらそんな懐の深さと芯のつよさがある作品だった。テレビドラマ「カルテット」や「花束みたいな恋をした」のなかで言及されていた今村夏子の「ピクニッ>>続きを読む

架空OL日記(2020年製作の映画)

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カタルシスもなく繰り返される日常。略さない酒木さん、ちょっと空気を読めないサエちゃん、副部長の悪口、コミネコール。深夜の30分連ドラと同じテンションの本作、劇場で100分掛けきったのだと思うと面白い。>>続きを読む

チチカット・フォーリーズ(1967年製作の映画)

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裸にさせられて狭い檻に入れられ、食事をしなければ鼻からチューブを入れられる。受刑者を主語にして語るならば能動態では表現しえない数々の場面が印象に残っている。彼らはまるで人権がないかのように扱われ、受>>続きを読む

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

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「現代アートハウス入門」第1夜、トークの録画上映つきで鑑賞。
六角形のたくさんの格子で区切られたはちみつ色の窓と、厳格な父が繰り返し読むミツバチの生態についての文章。屋敷に住む人間たちは(そしておそ
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サイコ(1960年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

ホラーが得意ではなく恐怖心を緩和するため、あらすじを読んでから観た。前情報なしで観たら、予想していた逃避行とはどんどん違う方向に展開していって、心臓がもたなかっただろう。サスペンス・ホラーの類いに極度>>続きを読む

ジオラマボーイ・パノラマガール(2020年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「社会がどうであろうと好きな女の子さえいればいい」とわたしとあなたが中心の世界に没入していくかのようなシャローフォーカスと、それでも存在感を発揮する、世の中の混乱を捉えたテレビのニュース。東京の街を闊>>続きを読む

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

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グラウンドのカットを1度も挟むことなくアルプススタンドのはしっこにいる人間たちのドラマにフォーカスするというのが斬新だった。高校生が演劇で表現できることという制約があったからこそ生まれた視点、描きかた>>続きを読む

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)

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なぜ渉はこんなにどうしようもない人を好きになって執着しつづけるのだ、と疑問だった。しかし、彼は「完璧ではないしょうもなさすぎるこの人が好きなのだ」と言った。どうしようもないとは、外面はいいが性関係にあ>>続きを読む

僕の好きな女の子(2019年製作の映画)

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「僕が君の虚像を探し求めているときにも君の実像が誰かといるということを考えると取り返しのつかなさを思い知らされる」というような(もっと綺麗な表現だったはず)モノローグが刺さった。

一般的な恋愛とは違
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TENET テネット(2020年製作の映画)

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音響が凄まじくて慣れるまでに時間がかかった。考察するのは楽しそうだけれど、やっぱりハリウッドの大作は見慣れない…。

朝が来る(2020年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

養子縁組の「育ての親」と子を中心とした物語かと思っていたが、よい意味で予想外の連続だった。物語は、謎の女性が夫婦の前に現れるまでに至る、「生みの親」と「育ての親」の過去を掘り下げることで深められてい>>続きを読む

Girls of Cinema(2018年製作の映画)

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2018年の「Girls of cinema」を経て、「少女邂逅」「21世紀の女の子」「はちどり」などを観ることができる2020年。もちろん映画監督の男女比の偏りなど映画業界と女性の問題はまだまだ解決>>続きを読む

劇場(2020年製作の映画)

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序破急的なリズム感の作品。

永田がプライドの高さとわがままで沙希を疲弊させていくさまに苛立つばかりで、なぜ沙希は永田と居続けるのかさっぱり理解できなかった。しかし、自活しない永田が沙希に頼りきってい
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百円の恋(2014年製作の映画)

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性と暴力(ボクシングは正確には暴力ではないけれど)の痛みを通じて人間の生の鮮烈さを描く作品が多いなと思った。
クリープハイプの主題歌が物語の延長になっているうえ絶妙なタイミングで流れ始めるので、いまま
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永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

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人間にカメラを向けて撮影している映画のなかの人物にカメラを向けられたときに感じるカメラの暴力性。撮影された映画のなかで、撮影行為の暴力性を見つめ直すような一瞬。唐突であったこともあり、どきっとした。>>続きを読む

人数の町(2020年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

たくさんの住人が登場するにも関わらず、メインの登場人物以外にあまりピントを合わせず、構図のうえでも端の方に追いやられ無機質に映し出されているところに、個別性を捨象された人間たちが集う「人数の町」の雰囲>>続きを読む

Reframe THEATER EXPERIENCE with you(2020年製作の映画)

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全く詳しくはないのだけれど、劇場の音響のよさを堪能したくて。彼女たちのシルエットの美しさ(ダンスしていても、立っているのでも)を生かした影の演出に見惚れてしまった。また、Perfumeの曲の多くはビー>>続きを読む

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46(2020年製作の映画)

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アイドルを推すということを見つめ直したくなる作品で、アイドル産業が孕む暴力性について考えさせられた。

1:彼女たちの社会的・商業的な成功を望むことは、彼女たちが幸せな人生を送ることと矛盾する場合があ
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3年目のデビュー(2020年製作の映画)

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日向坂46の表題曲は、男の子が思いを寄せる女の子の仕草や外見を遠くから見ているという「ポニーテールとシュシュ」や「Everyday、カチューシャ」など以前のAKB48に回帰するようなものが多いなと感じ>>続きを読む

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

鮮烈な一目惚れのシーンから始まったアデルとエマの恋愛。ふたりの違いははじめのデートシーンから「好みが合わない」というエピソードが重なることで示されるが、お互いが相手を家に招いて家族と食事をするシーンで>>続きを読む

はちどり(2018年製作の映画)

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1度目:
他の方も指摘していたが,家族を殴る兄や父が家族を思って慟哭したり、兄は生徒会長選挙や名門大学進学への重圧の中で生きていたりと、家父長制は女性だけでなく男性を縛って苦しめていたことが表現されて
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ピースオブケイク(2015年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「自分を好きな人なら誰でもよい」という恋愛観を持ってきたふたりが「相手が自分を愛していようがいまいがそのひとでなくてはならない」と思う出逢いを経験し、結ばれるラブストーリー。元彼の幻影と志乃のモノロー>>続きを読む

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

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展開が読めなくて容赦ないストーリーにヒリヒリした。確かに格差社会を描いているけれど、風刺画みたいな扱い方だなと思った。

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

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 原爆によって黒こげの死体になったり兵士として戦場に送られるも人海戦術に使われたり,その人が固有のその人自身であることの必要性を感じにくくなった時代。自分の固有性を感じられる居場所を求めながら混乱を極>>続きを読む

思い、思われ、ふり、ふられ(2020年製作の映画)

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少女漫画原作のティーンムービーが量産された時期にちょうど中高生だった。その時は壁ドンだとか顎クイだとか、恋愛の駆け引きが技のようになっていたし、ドSで気難しい王子様と天真爛漫でピュアな女子高生の恋愛な>>続きを読む

ドリーの冒険(1908年製作の映画)

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わかりにくさや繊細さ、複雑さは撮影や編集の技術が発達したからこそ作り出せるんだなと実感した。樽に入って子供が見えないところがサスペンス(観客が宙吊りにされる状態)であるそうです。

ここは退屈迎えに来て(2018年製作の映画)

3.8

チェーン店が立ち並ぶ国道沿い、交通手段は車と自転車。地方都市ってどこも同じような景色なんだなと思った。ステレオタイプな地方都市の風景。東京に行けば何者かになれる気がしたり自分の街をつまらなく思ったり、>>続きを読む

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