悪霊302号室

ブラック校則の悪霊302号室のレビュー・感想・評価

ブラック校則(2019年製作の映画)
3.8
画面的にも映画的だなあと思えるものは少なめで、どことなくテレビドラマ感はあると思う。でも、でも結局好きなんだなコレが。

いわゆるジャニーズ主演の、テレビ局の作る、流行りを詰め込んだ売れ筋の、キラキラした、恋愛が主題の、テレビ映画。ではなく。真の意味でティーン向けの映画。劇伴は抑えめで渋く、役者も見たことある人ばかりではあるものの配役が絶妙で使い方が非常に贅沢だったりストイックだったり。
それは主演二人も例外ではなく、佐藤勝利の「顔が良いのに陰キャ」。こんなイケメンなのにそんなわけないのにこの小野田創楽は間違いなく限りなく陰キャ。演技経験の少ないという高橋海人、したたかでヘラヘラしてその実熱い月岡中弥という男の造形力の高さ。モトーラ世理奈演じる町田希央は「少女邂逅」で観た彼女の魅力そのまま、ただ単にいわゆる可愛かったりカッコ良かったりするヒロインとは全然違った美しさを持っていて、彼女ありきの役であり同時に役柄ありきの彼女でもある。これでもかとピタリとハマっているこの役回りは役者自身の力とスタッフが引き出す力と両方が遺憾なく発揮された結果なんだと思う。

それでいて物語も、前半ひたすらに描かれるのは「ブラック校則」という彼等にとっての"現実"。コミカルでファンタジーな部分もあるけど抑圧を突きつけられている様は実に陰鬱で卑屈。そこからの終盤の突飛さはツッコミどころもあるにはあるけど、やはり十分なカタルシスを生んでいたと思う。突飛さの中にも身に詰まされるリアル~な風景もあって、その辺の匙加減が絶妙な説得力を生んでいるのだなぁ。
「ブラック校則」というタイトルで、高校が舞台ではあるけれど、「"ブラック"企業」とか、そんな言葉が流行り言葉として存在する現代としては全世代に響く物語になっていると思う。実際、本編でもそれに苛まれているのは生徒だけじゃなかったりして、仇となる相手にもある部分での"弱さ"がしっかりと描写がされていて、隙がないな、と思う部分。

ちょっと残念に思ったのは、結局地上波とHuluのテレビドラマという補完がある分、映画本編として織り込まれなかった部分にあるだろうか。
これも映画外という伸びしろとして存在してるから良い(或いは映画内に盛り込もうとすると映画のバランスが崩れる)、と思えるのか、映画内に盛り込んで欲しかった、と思うのかは人それぞれだと思うけど、僕は後者の考え方をしてしまった。終盤の展開の説得力や爆発力として大事な機能をしてくる部分だと思うので。

ちょっと気恥ずかしくなる部分もあるけれど、それも含めて青春への感じ方なのかもしれない。とても良い、映画でした。
悪霊302号室

悪霊302号室