YURINA

ブラック校則のYURINAのレビュー・感想・評価

ブラック校則(2019年製作の映画)
5.0
ツッコミどころやテンポの悪さがないかと言われれば嘘になるけれど、私がこの映画に星5をつけたいのは、きちんと高評価をしないとアイドル映画として埋もれてしまいそうだから。

とはいいつつ、佐藤勝利くんのファンなので彼のお話から(ここから始めないとどうしても文章の収まりが悪くなりそうなので)。この映画で佐藤勝利くんが演じた創楽(そら)は佐藤勝利くんの魅力そのままに演じられていたように感じる。誰かを傷つけないようにゆっくりと丁寧に言葉を紡ぎ、不器用で自信なさげだけれど自分がやらなくちゃいけないことをしっかりと分かっている。大切なもののために戦うことを厭わない。私が知っているのは人間・佐藤勝利ではなく、あくまでアイドル・佐藤勝利だけれど、彼がもつ魅力がギュッと詰まった映画であるように感じた。圧倒的な顔の綺麗さは紛れもなく彼の魅力だけれど、彼のファンとして発信するならば、彼の顔面以外の部分の素晴らしさを述べたい。世界中のかっこいいと優しいを詰め込んだら彼のような人間が出来上がるのだろうと私は本気で思っている。

そして物語について。校則改革の話かと思っていたけれど、というよりは高校生一人一人のそれぞれの戦いの話のように感じた。自信が持てない自分との戦い、自分を好きになるための戦い、ありのままで生きていくための戦い。私たちだって日々戦っている。生きるための戦いはそこら中で行われている。けれど、高校生の彼らの戦いはもっと不器用で生々しくてそれがとても響いた。

中でも、吃音症持ちのラッパーという登場人物がよかった。あとから調べたら、役者自身が吃音持ちのラッパーであるらしい。ラップのことも吃音症のことも彼のことも何も知らない私が何かを論じることはできないけれど、彼のラップに心を揺さぶられたこと、生まれて初めてラップを聞いて涙を流したことは私の人生にとってとても大切な経験になるはず。

今思えば何をそんなにルールに従って生きていたのだろう、と思う。けれど、きちんとルールを守っていたからこそ、きちんと勉強をしたからこそ、自分のやりたいことを自力で掴み取り、1人で生活できるだけの基盤を整え、今好きなお洋服を着て好きなものに囲まれて生きていられるのかもしれない、と思うから無責任なことは言えないとも思ってしまう。大人になったからこそ、子供を守る義務を課せられた大人たちの難しさもわかる(この作中では明らかにそれがいきすぎていたけれど)。

いい年をこいて、結婚も出産もしないで、私の戦いはきっとこれからも続く。よく知りもしないで決めつけたような発言は嫌い。だから、私は「どうせアイドル映画でしょ」という世間の声に抗うのだ。
YURINA

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