腐敗していた禅寺に対する水上勉の絶望と憎悪が分かる作品。とんびのねぐらについて話す時の慈念のどろどろした感じが好きだった。
ひとつひとつのカットを説明し過ぎないんだけど、丁寧に見せている。慈念のボロボロの靴と和尚の綺麗な靴を時間差で対比的に映したり、里子に迫られた後の慈念の複雑な顔を映していたり、こちらに慈念の境遇とラストに至る心理を想像させる仕掛けがしっかりしていると感じた。
一番最後は拍子抜けする感じだったが、穴が修復されて観光地としてこともなげに存在していることに無常感を抱かせたい狙いだったのだろうか。