半兵衛

雁の寺の半兵衛のレビュー・感想・評価

雁の寺(1962年製作の映画)
3.2
この作品を見ると、川島雄三監督は情念の作家ではないなと思う。大映のスタッフによるカメラワークや美術が鬱屈した修行僧である主人公がいる逃げ場の無い苦しい世界を見事に表現しているのに、川島監督のドライな演出が少年の内にある黒い世界と正面から向き合っていないため、水上勉の世界観から話が進んでいくに従いどんどん乖離していく(住職が失踪してからのサスペンスは凄いが)。おそらく内田吐夢、後輩の増村保造や今村昌平ならば正面から少年の内に秘めた世界を表現したはず。川島雄三の演出が俄然活きるのは川島常連俳優である山茶花究演じるカメラ好きの坊主の件で、三島演じる主人公のいる寺の住職とのどこか軽妙なやりとりはいつもの川島スタイル。
若尾文子演じる住職の愛人は若尾全盛期の美しさと艶やかさを持っているが、増村作品のヒロインのときと比べると演技に深みがなく、「男性が考えた母性的な女性」のイメージになってしまい映画のコクが薄くなってしまっている。
そしてオチ、それまでの「情念」や「衝動」とかけはなれた乾いたカラーの世界。
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