朝田

Mank/マンクの朝田のレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
3.9
役者、撮影、演出全てがハイレベルな傑作。だけど、凄い変な気分になる映画でもある。古典的なハリウッド映画の形を借りていながら、スピーディーなカット割りによって情報を大量に提示していく語り口は間違いなく現代的。更に過去と現在を往復するのだが、徐々にその往復のリズムが早くなり、回想である事を示すテロップも消える。またストーリー自体もさる事ながらまるでこの映画を説明するかのようなメタ的なセリフも用いられる。だから見ている間果たしてこれは「過去」に作られた物語なのか「現在」の物語なのか、という境界線が消えていく奇妙な感覚に陥る。これはフィンチャーが「ゾディアック」以降チャレンジしている映画が終わった後も物語が続くような感覚を体感させるための造りだと思う。この映画で描かれている作家と権力の対立を過去の話として描きたくなかったのだろう。そこにフィンチャー自身のパーソナルな思い、反骨精神を見て感動する。単純にここまでストイックに会話だけで魅せるフィンチャー作品も過去にはない。「マインドハンター」を経たからこそ生まれたあらゆる意味で異色な映画。その奇妙さ故に近作「ゴーンガール」、「ソーシャルネットワーク」ほどのインパクトは無いが、傑作なのは間違いない。
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