Issei

Mank/マンクのIsseiのレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
4.6
最高(にアナーキー)な監督”David Fincher”が、最高の役者”Gary Oldman”と共に、最高の脚本・シネマ「Citizen Kane」を軸に亡き父の遺稿による物語を紡いでいく

陳腐なハリウッド回顧録などではなく、
本当に映画好きの為の映画に尽きた全力のパンチ映画だった。

直前に予習として再鑑賞した新聞王の物語を、また直ぐにでもサンドイッチして見たくなった。

史上最も良くできたと言われる「市民ケーン」と同様、過去と現在が倒錯しながら深まる真相に深すぎるほどの映画史へのリスペクトを感じ、
モノクロ音声にまでして、フィルムの焦げ跡まで入れるフィンチャーの完璧ぶりに脱帽。
役者もいつものように無限のテイクを重ねられたのだろう、1930年代ハリウッドの時代を生きる人となり観客を世界の中に自然と飛び込ませて魅せた。

酒に陶酔し眠りに落ちるたびに見る過去の物語から、市民ケーンの登場人物と実際のリアルを重ねながら、答案用紙のように繰り広げられるその脚本の広さに感動してたまらなかった
“Rosebud”,”Susan”はこのように出来上がったのだと....

そしてさらに繋げられる政治のシークエンスが、自ずと現代のアメリカと重なるところも流石としか言えない精密さ。

長いことフィンチャーの最新作を待ち望んで良かった。
まだ何回も交互に見て、本質をしっかりと掴みながら巨匠となった監督の新作を待ちわびたい。
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