YukiSano

Mank/マンクのYukiSanoのレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
3.9
フェイクニュース王VS映画。

名作「市民ケーン」の脚本を書いたマンクを主人公に、1930年代の黄金期ハリウッドの光と影を虚実交えて描いた作品。

市民ケーンのモデル新聞王ハーストとは、新聞を売るためにフェイクニュースを作ってアメリカとスペインを戦争に陥れた男である。彼の利益のために米西戦争は引き起こされた。

米の戦艦が事故したのをスペインのせいだと言い切って、罪なき人々がスペインで圧政に苦しんでいるとも報道したため国内で戦争論が沸き上がっていったそうだ。その後もアメリカは同じようにトンキン湾事件の捏造をしてベトナム戦争、大量破壊兵器の捏造でイラク戦争を起こした。ハーストはそんなメディアを使った戦争の草分け的存在である。

その男の物語を虚実交えて描いたマンクを虚実交えて描いたのが本作。

完璧な40年代の再現と、撮影方法まで踏襲して蘇らせた当時のハリウッドの豪華絢爛さに酔いしれながら、天才達が何を描こうとしたのか時系列をシャッフルして市民ケーンのように描かれる。

フェイクニュースを作った男の物語にフェイクを入れて描かれるので多層的過ぎて頭がクラクラしてくる。

フェイクのせいで友人を失ったマンクの怒りは現代の我々の時代にも突き刺さってきて、彼の原動力が永遠の名作を生んだ。

新聞王ハーストの名前は現代人は市民ケーンでしか、もはや覚えてないのではなかろうか。ただし彼のフェイクニュースの作り方は脈々と受け継がれ、今もウクライナとロシアの戦争でも活用されている。偽旗作戦など太古からあるだろうが、メディア戦争の草分けはハーストらしい。

そんな虚構使いをフィンチャーは、「ファイトクラブ」のタイラー・ダーデンのように描きつつ、「ゲーム」のように虚構と現実の境目を曖昧にした。

トランプ時代に制作された本作。フェイクニュースというウィルスの行く先が今はウクライナ戦争まで進化して、何処まで行くのか。

フィンチャーはマンクのように皮肉たっぷりに映画でそれを描き続けてくれるだろう。正義というより、茶化して馬鹿にするために戦い続けてくれるはず。

そうやってタイラーみたいに、いつまでも世界を茶化し続けてほしい。
YukiSano

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