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シャン・チー/テン・リングスの伝説のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2021年のアメリカの作品。

監督は「黒い司法 0%からの奇跡」のデスティン・ダニエル・クレットン。

あらすじ

ホテルの駐車場係として、同僚で親友のケイティ(オークワフィナ「ラーヤと龍の王国」)と共に気楽な日々を過ごしていたショーン(シム・リウ)は、ある日謎の組織「テン・リングス」に襲われて、母イン・リー(ファラ・チェン「テイル・フロム・ダーク2:奇幻夜」)の形見のペンダントを奪われたことで自身の宿命に立ち向かっていく。

2019年「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」によって、アベンジャーズシリーズの「インフィニティ・サーガ」は幕を閉じた。

そして、フェーズ4となり、数々の作品、及びそれに伴うドラマシリーズが展開されていたわけだが、かく言う俺はあれからMCUには恥ずかしながら縁遠くなってしまった。せっかくディズニープラスに加入したはいいものの「ワンダビジョン」や「ファルコン&ウィンターソルジャー」は「いつでも観れるから」と未見だし、ならば映画で!と意気込んだはいいもののフェーズ4の先陣を切るナターシャ見納めの「ブラック・ウィドウ」は配信と同時公開という売りによって地元の大手映画館が総スカンで未公開で未見という…散々たる結果。ということで今作も、「ブラック・ウィドウ」の例のゴタゴタが功を奏してか、劇場先行公開ということで地元の映画館でもやってくれたわけだが「アジア系ヒーロー?うーん、見てくれも微妙だなぁ」と思って、先延ばしにしようと思いはしたんだけど「いや、ここで先延ばしにしてはいよいよMCUについていけなくなる!」と考え直し、公開2日目の今日早速行って参りました(「スーサイド」と同様にミニポスター配布ありがてぇ)!!

結果としては面白かったっ!!ただ…言いたいこともあるっ!といった感じ。

まず、今作のヒーロー「シャン・チー」はMCU初のアジア系ヒーロー!初めて「シネマトゥデイ」で制作決定の報を聞いた時は「嘘だろ?」と思ったんだけど、調べてみると原作コミックの初登場は1973年と割と古くからあるシリーズらしく、なんとコミックではキャップやスパイディ、果てはウルヴァリンなどのスパーリング・パートナーも務めるくらいの格闘術の腕前も持っているらしい。

ただ、そういうヒーローがいるっていうのはアジア系ヒーローという出自含めて「多様性」を謳う現代社会においては作られる意義はあるとは思うけど、こと「MCU」シリーズにおいてはキャプテン・マーベルという一旦「天上」を超えてしまったヒーローを出してしまったことで「格闘術が秀でている」というだけでは埋もれてしまうのでは…と思った。それに加えて制作決定の後に、なんかぬるっと決まった感がある主演のシム・リウさん…。てっきりヘンリー・ゴールディングとかのアジア系でもイケメンの部類に入る俳優さんを起用するかと思いきや、顔立ちは整ってるには整ってるけど、実にアジア人らしい一重の温厚そうな顔つきの俳優さんに決まって、ファーストショットのあの赤いジャケットの立ち姿を観た時には「本当に大丈夫かな、これ…」と思ったんだけど…いや、これが観てみると普通にカッコいいし、何より好きになるキャラクター!!

冒頭は、同僚のオークワフィナ演じるケイティと共にホテルマンで駐車場係の仕事をしながら、気楽で楽しい日々を過ごしている描写から始まる本作。

俺はこのオークワフィナさんという女優さん、最近メキメキと頭角を表している女優さんらしいんだけど、出演作も未見で全然知らなかったんだけど、そのオークワフィナ演じるケイティがいい感じにぶっ飛んでて、そんなケイティにおいて主人公ショーンは「諌め役」で悪友といった感じで一緒に預かったスポーツカーをぶっ飛ばしたりと実に楽しそう!!バーでステータス高い幼なじみに嫌味を言われて、イラっとはするものの、「まぁ、明日も早いし頑張ろうぜ!」といった感じで、でもカラオケオールしちゃったりと本当にどこにでもいそうな「脇役」然とした感じ。

ただ、ここまでで映画をよく観る人ならわかりますね?「舐めてた相手が殺人マシーンでしたムービー(©️ギンティ小林)」ならぬ「舐めてた駐車場係がスーパーヒーローでした」展開として、この「助走」パートが下地となって巻き起こるバス内アクション!!

殺し屋5人と中ボスの片腕に鋼の刃を装着している傭兵レーザー・フィスト(フロリアン・ムンテアヌ)を相手に突如拳でノックアウトを決め込んだと思ったら、あれよあれよという間に八面六臂の大活躍!!特に横スクロールで流れる、引きで魅せる超絶アクションは必見!!ちゃんとカンフーっぽさもあって、マジでここはきたーーーーー!!という感じでボルテージがグングン上がる!!

演じるシム・リウもそれまでの温厚そうな人柄とは一変して、実に頼りがいがあるナイスガイに一瞬にして変貌しており、その姿はまさにヒーロー!一重の瞳も攻撃体勢になると実にクールに映り、すげぇカッコいい!!バス内のゴタゴタの中でも地味に乗客が外に飛び出さないよう救出もしており、ポイント高し!

という感じで、のっけからシャン・チーと、そして演じるシム・リウから目が離せなくなることになるバス内アクションシーンなんだけど、他にもアクションシーンがすごいっ!!

例えば、中盤シャン・チーという名を明かしたショーンが妹のシャーリン(メン・ガー・チャン)がボスの地下闘技場で敵組織「テン・リングス」に襲われるシーンがあるんだけど、高層ビルの外層で竹で組み立てた足場を舞台にアクロバティックなアクションを披露するシーンがあるんだけど、不安定で時に崩れる足場の中でもシャンチーが動く動く!!足場の竹を使って敵を振り払ったり、落下しそうになるケイティを助けようとものすごい速さでグングン近づく推進力とあまり見たことのないアクションの目白押しで迫力満点!!

そこで、本格的にアクションを披露するシャーリンも不敵な笑みがステキなアジアン美女でアクションもシャンチーの妹だけあって凄かった!!ちょっと可愛い片桐はいりっぽいけど笑!

あとは、シャンチーの出自が明かされるシーンでの、出ました、香港俳優界の「国際的スター」トニー・レオン(「モンスター・ハント 王の末裔」)演じるウェンウーとイン・リーの出会いからの即バトルシーン。
ここは実にアジアアクション風味が効いていて、「気」を纏ったアクションだったり、足で「太極図」を弧で描く独特の構えだったりと、どことなく「グリーン・ディスティニー」っぽくて良かった!!

ここのシーンも、そうだけどやはり今作全体的にトニー・レオン力が凄くて、あの濃ゆい顔立ちと、まさに「テン・リング」の力を実際に纏っているかのような今観ても「老い」を知らないスター性…。アクションも衰え知らずでシャンチーとの最終バトルでもキレキレのアクションを見せてくれる!!

もうこのトニー・レオンを引っ張ってきただけで今作は「勝ち」であり、「名優」トニー・レオンに「新星」シム・リウが挑むという構図も物語にリンクする感じで良いんじゃないでしょうか。

戦闘時には青く輝く両腕に備わった「テン・リングス」も発射する際の「ドンッ!」という感じで敵を薙ぎ倒す様や終盤ではアイアンマンなみに飛び道具に切り替わる機動性の高さも披露する万能性もクールでカッコいい!!

ただ、これは話とは全く関係ないけど、やっぱトニー・レオン観てるとウッチャンにしか見えなくて、もしこのまま話題になったらウッチャンがコントとかでパロったりしないかな笑。

そんな感じで、俳優良し、お話良しで全体的に申し分ないんだけど、終盤にかけて「MCU」的に染まっちゃう感じが…。

というのも、中盤から母親イン・リーの故郷タ・ローの村に行くことになるんだけど、そこは麒麟や狛犬などの幻獣などが住まうファンタジーな村で、そこで「修行」して、「テン・リングス」と最終対決する流れに移行する。

で、そこで「竜の鱗」で作った武器や防具を装備することになるんだけど、なんかモンハンっぽさもあってまさにレウス装備的でカッコいいはカッコいいんだけど、ヒーローコスチュームにしてはなんか他の村人とも大差なくて地味。

で、シャンチーはその竜の鱗で拵えた棍でウェンウーと対峙するんだけど、その棍も折られて、湖に埋没、そこで覚醒して、湖の中からシャンチーのシンボルでもある龍と共に舞い上がって…って一気にファンタジー化するなぁ!!

しかもしかも、しまいにはウェンウーから「テン・リングス」まで吸収して一気にヒーロー化!!

いや、これはこれで今後のMCUに連なるヒーローになっていく上で必要な流れで、確かに「テン・リングス」の武器のポテンシャルの高さや絵的なかっこよさはめちゃくちゃ良いんだけど、なんか複雑…。

せっかく「レジェンド・オブ・カンフー」っていう呼び名があるので、てっきりMCUの超人ヒーローの中でも「拳一つで道を切り開く」、「NARUTO」で言うロック・リーとかガイ先生的な感じになっていくのかと思ったら、なんか普通のヒーローになっちゃったなぁという感じで惜しい。

まぁ終盤の「日本昔ばなし」もかくやの龍にまたがって舞い上がるシーンだったり、ウェンウーからのテン・リングス「継承」のグッとくるシーン、その後のラスボスとのまさに「かめはめ波」的な必殺技での決着(という割にはラストは「はっ!」で終わらせるあたりわかってない!!)も良かったし、もう一度書くけど今後の「MCU」ヒーローというポジションに置いては必要な変貌というのはわかるんだけど…難しい問題だ。

おい、言ってること上述と違うじゃねーかと思うかもしれないが、それだけ序盤からのアクションが良かったから、そのカンフーアクション一点突破なヒーローが「多様性」の時代においていても良いかもな…と思ってしまったわけで。

ただ、これだけは言える。バス内アクションでそれまでの期待値の低さから一転して超絶アクションを披露してくれた後、「ヒーローポーズ」で構える姿は遂に「MCU」という全世界が注目するヒーロー映画に初の「アジア系」ヒーローが誕生した瞬間に立ち会えた喜びと誇らしさでちょっとグッときてしまった。

下半期には「エターナルズ」も公開するし、こっから、本格的にフェーズ4が動き出しそうな予感に満ちたエンドロール後のシーンと相まって、またMCUが「再始動」する重要な年となりそうだ!!
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