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シャン・チー/テン・リングスの伝説のYOUのレビュー・感想・評価

4.2
デスティン・ダニエル・クレットンが監督を務めた、2021年公開のMCU第25作目。
『ブラック・ウィドウ』に続きフェイズ4に突入したMCUの2本目の劇場公開作品となる本作は、幼い頃から厳しく鍛えられるも現在は平凡なホテルマンとして生活する主人公シャン・チーが犯罪組織を率いる父の計画とその真相に向き合っていく姿が描かれます。自分はかねてからアメコミヒーロー映画において「アジア人のメインキャラクターが全くの不在」という件に関してずっと引っ掛かりを感じていました。特にMCUは『エイジ・オブ・ウルトロン』や『ブラックパンサー』『エンドゲーム』など幾度もアジアを舞台に採用しているにも関わらずアジア人キャストは本当にただの背景としてしか扱われず、挙句には『ドクター・ストレンジ』のエンシェント・ワンを”わざわざ白人キャストに置き換える”始末で、ハリウッドの最前線を突っ走るメガヒットシリーズなだけにここは個人的にかなり不服な部分でした。以上から自分は「マーベル映画初のアジア人俳優主演作」となる本作の公開を心待ちにしていた訳ですが、実際の完成品はというと「予想を遥かに超えて大満足の仕上がり」でした!これは単にアジア人をフィーチャーしているからではなく、他のMCU作品と比べた時に「アジア人ヒーローならどういう”戦い方”が出来るか」という部分にまで回答してみせるような本作のスタンスにこそ自分はいたく感激しました。特に”陰と陽”や”因果応報”といった東洋思想に基づく父子のドラマには我々の実人生とも重なる人間の多面性が内包されていますし、ここを以て自分はやはり『スター・ウォーズ』旧三部作とも非常に近い味わいを感じます。「過去の幻想に囚われた父親」の存在はシャン・チーにとっての”拭えない過去”でもありますが、最終的には彼が自らの過去や因果をキッパリと断ち切ることで”人生の再スタートを切る”という物語に着地している本作は、「ヒーロー誕生譚/オリジンストーリー」としてもMCU随一の出来ではないでしょうか。

また本作は何よりアクション映画として最高に楽しい一作でして、なんと本作を観るだけで”アジアン・アクション映画の歴史”が一通り網羅出来るようになっているのです!冒頭のウェンウーとイン・リーによるしなやかなアクションシーンからはキン・フー作品に代表される”武侠映画”にも似た優雅さやが感じられますし、続く現代パートでは”ジャッキー映画直系”のタイトかつ重層的な格闘アクションが展開されます。特殊な舞台立てを存分に活かすと同時に各々のキャラクター性までしっかりと反映させるアクションはまさにジャッキーイズムですし、MCU作品においてここまで本格的な格闘アクションが繰り広げられるのも実に新鮮な感覚でした。そして終盤でのウェン・ウーとの壮絶なバトルシーンはカンフー映画のクライマックスさながら平地での一騎打ちですし、ここでのフィクショナブルなド派手格闘は”日本のバトル漫画”を読む感覚とも似ています。更にこのクライマックスでは同じく日本が世界に誇る”◯◯映画要素”まで盛り込まれており、もう自分は感無量の極みですよ。マーベル映画好き、カンフー映画好き、そして◯◯映画好きの自分にとってはまさに玉手箱のような作品ですし、更に物語の根底には誰しもが共感出来るテーマと力強くポジティブなメッセージが流れているという事で、2度鑑賞してもなお冷静さが保てないくらい大好きな一作となりました。終わり方も最高!




























































































































































常に均等に浮かんでたり、”シュピン シュピン”と素早く繰り出さたり、気持ち良く腕に戻ってきたりと、「テン・リングス」のアイテム的フェティシズムとしても最高でした。
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