ツクヨミ

青葉家のテーブルのツクヨミのレビュー・感想・評価

青葉家のテーブル(2021年製作の映画)
3.9
オシャレな小道具世界観と青春の煌めき。
夏休みの間だけ予備校に通うため母の友人宅にやってきた優子は自分が本当にやりたいことを探していく…
松本壮史監督作品。今作は"北欧、暮らしの道具店"というインテリアショップが協賛していることもあり、オシャレな小道具がいたるところに溢れる素敵なショットが満載で目から鱗だった。まずオープニングから、真っ白な室内と小道具溢れる部屋に主人公優子が部屋の真ん中にいるショットの構図がめちゃくちゃ美しい。そして彼女が右を向くと右にある小道具にクローズアップ、左を向くと左にある小道具にクローズアップするという小気味良い感じがよく、最後に最初のショットに戻ってグラスにお茶が注がれるというなんとも日常的な動作が挿入される美しさよ。この構図は小津調とは違うが実に小津安二郎的なこだわりを本作のカメラワークに感じた。
そして内容に関して言えば高校生優子の未来に対する心の葛藤だったり友達との何気ない遊びやケンカを瑞々しく描いていて、青春の煌めきをじわりと感じられて良かった。その点では同監督の"サマーフィルムにのって"でも青春の煌めきと葛藤を描いていたので、松本壮史監督は青春キラキラムービー(夏)を撮るのが好きなのかなと強く感じる。
しかし今作では主人公優子とその母知世の2人の青春を同義的に扱っており、2世代を通して青春はキラキラしつつ難しいものだという見せ方も良い。主人公優子は絵を描くために予備校に行き同じ志を持つ友人と仲良くなる、それに対し母知世は友人めいこと同じ志しを持っていたが仲違いをしてしまうという点では対義的でもあったりして面白い。そしてラストは家族や友人の温かさが沁みる展開にほっこりする。
全体を通してゆったりした日常ストーリーにほっこりし、美しい構図優先ショットに目から鱗な映像に見せられた秀作だった。
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