桑原

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーの桑原のレビュー・感想・評価

1.5
奥行きのあるロケーションと、物量・色数でリッチ感を出しているが、内容はかなり退屈。

チャドウィック・ボーズマンが亡くなってしまったことを拠り所に観客の感情に訴えかけているようなもので、

「もし存命で、他の理由で降板しているとしたら」

この作品の評価はガラリと変わってしまっていたのではないだろうか。

3時間近く尺を割きながら、ワカンダとタロカン衝突の理由が軽薄。

戦争にならなければ話が進まないという部分はあるので、話し合いで和平ルートというワケにはいかないものの、もう少し何か外的要因で戦争不可避、強いられてしまうような物語にできなかったものか...。

シュリが復讐モードに入っていたとはいえ、最終的には暴力で降伏を引き出したようなもの。
虐殺や隷属をしていないだけで、脅迫めいた終戦で決着をつけてしまったのは正直引いてしまった。

それならば、キルモンガーの影が心に差して、復讐鬼となったシュリ。
若さと己の才能、危うさを孕み、迷いながらワカンダを守ろうとするタカ派のリーダー。
そんなキャラが見たくもあったが、まぁそんな過激なキャラは出せないものな。

あれではどちらサイドも無能なリーダーに振り回される民衆でしかない。
あれほどの力がある国家同士にもかかわらず、あまりにもお粗末な理性レベルである。

アイアンハートの存在も、初出とは思えないほど端折った展開。何か他のドラマでもう出ていたのかと思ったくらいだ。

後にオリジンとなるドラマを用意している都合もあるのだろうが、今回出す必要性が希薄。ヴィブラニウム探査装置登場のためだけに出てきたようなもの。

チャドウィック・ボーズマンのブラックパンサーがハマり役だったからこそ喪失感も大きいのだが、その悲しみに頼り過ぎている、死を利用していると感じてしまう作劇の脆さに心底落胆してしまった次第だ。

自分にはもうMCUは合わないのかもしれない...。
桑原

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