天パのT

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーの天パのTのレビュー・感想・評価

4.0
この作品を世に出すまでにチャドウィックの死と向き合い、最大の弔いの心と共に制作活動に取り組んだということだけで、本作を讃えざるをえない(なぜなら、ライアン・クーグラーはチャドウィックの死への悲しみから、一時は監督業そのものさえリタイアすることを考えたというのだから)。

ただ、本作の問題は、要素を詰め込みたすぎたということだと思う。その結果、チャドウィック、ティ・チャラの弔いというただ一つを除いては、どれも中途半端な出来になってしまったと感じる。
というのも、シュリの葛藤も、結末はわりとアッサリ描かれている(結末はあああるべきだし、ああするしかないと思うが)し、同じような境遇のワカンダ-タロカン間の戦い、それからそこに絡んでくるアメリカ、エヴェレット・ロスのドラマ、新キャラクターであるリリ・ウィリアムズのドラマ…などなどが詰め込まれているのだ。ワカンダ-タロカン、そして介入してくる第三者としてのアメリカ、という構図は、そこに時間をかければ、それはそれでめちゃくちゃ面白いストーリーになったと思うけど、他にもやることが多すぎて、そのあたりあまり面白く無かった。
結局、色々描くべきことを多く用意しすぎて、2時間40分というMCUでら『エンドゲーム』の次に長い作品となったとはいえ、時間が足りなかったなーという感覚になってしまう。人によっては、この長さに冗長さを感じるかもしれないが、自分はむしろかなり詰め込んじゃったなー駆け足だったなーという感想だ。
他にも、1作目で開国宣言したはずなのに何も進んでない、シュリが可哀想すぎる、ワカンダのキャラクターが感情的すぎて問題が起きまくっている……など残念な点が散見された。

ただ、いろんな要素がある中、やっぱりティ・チャラ…チャドウィック・ボーズマンへの弔い、敬意は中途半端ではなかった(ティ・チャラの死因についてはあまり詳しくは言及されないが、それで良かったと思う。なぜならチャドウィックないしティ・チャラの死に向き合うということは現実世界とリンクしているわけだから中途半端に死因を作り上げるよりも配慮が行き届いていると思うためだ)。悲しくも、美しく、その要素は描いてくれていた。オープニングやラストシーンなんて美しすぎて、涙なしでは観られないよ…。
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