ヒムロ

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのヒムロのレビュー・感想・評価

3.7
国王にしてブラックパンサーであったティ・チャラが病に倒れ、死んでしまってから1年。
ヴィブラニウムを独占するワカンダに痺れを切らした米軍は極秘裏にヴィブラニウム探知機を開発、なんとワカンダではない大西洋上でヴィブラニウムを深海に発見する。
しかし、それは深海にある王国タロカンの資源だった。
タロカンの王ネイモアはヴィブラニウムの秘密を世界に明らかにしたティ・チャラとワカンダに怒り、ワカンダへの侵略をほのめかしながら探知機の発明者を連れてくるように言うのだった。


2時間40分とめちゃくちゃ長い内容だったが、ブラックパンサーを演じたチャドウィック・ボーズマンの死を急遽ストーリーに盛り込みながらもかなり自然な流れで違和感なく楽しめた。
中盤でタロカンの美しい映像がたっぷり楽しめたのもいい気分転換になって素晴らしい構成だった。
資源をきっかけに黒人が白人から被害を受けるという話をベースに内輪(この場合ワカンダとタロカンが仲間かは微妙だが)で揉めてしまうあたりも風刺が効いている。

活躍するのがほぼ黒人女性というめちゃくちゃポリコレ意識の作品だが、ティ・チャラ亡き後強キャラはエムバクを除いて元々女性陣ばかりなのでそこまで気にならない。
新キャラのリリことアイアンハートも原作から黒人女性なのでここに絡めてくるのはかなり構成上スマート。
登場頻度の割に薄かったオコエにもコミカルなシーンが描かれていて今後更なる登場があることを期待させてくれる。
欲を言えばロスとヴァレンティーナ側の話をもっとしっかり描いて欲しかった。

特にヴィラン勧誘おばさんことヴァルはきっちりラストで勧誘シーンがあると思っていたのでがっかり。

シュリの伝統ではなく科学で未来を拓いていくキャラクター像は、いい意味でワカンダらしくなくて気持ちがいい。
兄を亡くした悲しみと復讐に囚われるシュリが先祖の元で交わす会話が非常に苦しくていい采配だった。
それに無理にティ・チャラに喋らせないのが英断。
それでいてEDにしっかりと観客もティ・チャラおよびボーズマンを想える時間を貰えるしっとりとした曲が最高。
リアーナが彼のために書き下ろしたEDと聞いて納得。

戦闘はワカンダ系らしく人数がめちゃくちゃ多くて派手ではあるが見づらさは否めない。
ミッドナイト・エンジェルという新しいスーツがあっても戦闘自体は近接戦ばかりで変わり映えしない。
ラストの船上のバトルや一騎打ちよりも前半のカーチェイスのが見応えがあったのは残念。


前のブラックパンサーからそうなのだが僕は顔で全然区別がつかないので、オコエとアヨとアネカがめちゃくちゃごっちゃになる。
というかほとんど区別がついていない。
ドーラ・ミラージュの区別しにくさだけは本当に何とかしてほしい。

吹き替え派としてはシュリの声優を務めている百田夏菜子さんが懸念点だったが、しっかり違和感なく上達していて杞憂だった。
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