とちこ

巴里の屋根の下のとちこのレビュー・感想・評価

巴里の屋根の下(1930年製作の映画)
4.2
ルネ・クレール監督はショット構成がすごくいいですね。例えばある被写体を映す際に、撮る角度によって被写体の体の一部だけしか見えないようにする独特な構図のショット(=ポーラのアパルトマンの屋根窓から見下ろすように、彼女を訪れたフレッドを写したショット)や、画面手前の人物とその背後にある鏡に映り込む人物を一緒に捉えるショット(=同じ席にいるフレッド、彼の浮気相手の女、ポーラを写したショット。鏡に映り込むのはポーラのフレッドを見つめる顔)など。
ショットそれ自体に豊かな意味を持たせている印象を私は受けました。これはルネ・クレールが無声映画時代から育んできた「音が無い状態でイメージをどう見せるか」という美学が出ているところかもしれません。
映像以外にも、音の使われ方で面白いのが結構あります。映像と音をいかに組み合わせるかの試行錯誤をしている感じが伝わってきます。まさに、サイレントからトーキーへと移り変わっていく当時の映画制作の状況を反映している作品だなと思いました。
ちなみに、この映画で出てきたBallというのは飲み屋さんのことかなと最初思ったんですが、辞書で調べてみると「(大衆的な)ダンスホール」という意味でしたね。だから、踊る人があんなにいるんだなと納得です。
とちこ

とちこ