1930年フランスでつくられたルネ・クレール監督作品。
いくつもの煙突けむる灰色のパリの空。その街角では物悲しいアコーディオンが鳴っていて、街ゆく人たちが歌っていて、誰しもが裕福ってことはなくって、むしろ貧乏のどん詰まりで、そんな人たちをつけ狙うのはスリをはじめとしたコソ泥で、ねぇ。
えげつない映画よこれ、大衆が目を背けたい現実をホイっとそのままお見せになっちゃうというねぇ。それだけじゃない! 歪んだ街並みに、仄暗い電灯、硬く冷たい石畳の道々。これでもかって見る者を追い込む演出の数々。
とても花の都なんてもんではないんですよ巴里ってところは。だけれども、だからこそ、人はそこで生きていくのですね。切なすぎる映画でした。お見事でした。