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夕陽のあとのSNのレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
4.4
菊池信之の音にはその土地の匂いがする。
音から匂いなんてと思うかもしれないけどそう表現するのが今はしっくりくる。

昨今の映画は台詞以外は基本ノイズと判断され、その全てはデジタル処理でノイズが排除されるか多くはアフレコで綺麗な音源に差し代わっている。

その場所、その空間で発生した音、響きというのは紛れもなくそこで映画を作る上で発生した軌跡であり本物だ。
映画は虚像であり嘘なのだが、撮影場所、演じている人間は本物であり、その場所を劇中の場所、役として見立ててあるだけである。つまり本物を使い嘘の世界を作り上げているのだけれど、音も本物を使い嘘をついていくって発想はそんなに間違ってないと思う。

音は目に見えず、聴覚からのみ感じ得るものなので意識は行きずらい分、違和感には敏感な世界だと思う。その中で繋がりを滑めらかにし違和感をなくす為ノイズを処理するという考え方は間違ってないと思う反面、それだと嘘が多すぎるだろと思わずにはいられない。

聞きづらいのはわかっている。
けどそういう理論で音を作り上げているんだ。
それが音響としての表現なんだ。

ここまで極力本物にこだわるのは現場で何かが発生しているのを感じているかもしれない。カメラ、レコーダーが回った瞬間、空気が変わり本物の世界と虚像の世界が混ざりあっているあの不思議な空間。それはその時代その空間、そこにその人達が集まったからこそ生まれたものでありそれ以上のものなど考えられない。

録音部が録ったものを素材と呼ばれる事に違和感を覚える。
その空間、その場所で発生される音に対してマイク位置によって響き等の表現をコントロールしているので、すでに録った時点で表現は始まってると思う。
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