ねこみみ

海辺の映画館―キネマの玉手箱のねこみみのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

2021/01/16 目黒シネマ

重すぎてもう観れないかもと思っていたけど、行きつけの目黒シネマで上映とのことで行ってきた。映画館でなら観れる!

何もかも「わかった」状態で観るとまた苦しかった…ぶっささった。
初見のときはわけがわからないまま通り過ぎていた部分もぜんぶわかるので、だいぶ早めからおいおい泣いた。

お隣(といってもかなり席をあけての)のおばさまは、前回私がボロ泣きし始めたくらいの箇所からぐずぐず聞こえてきた。わかる、わかるよその気持ち…

あー、やっぱりものすごい映画だ。
映画は歴史を変えられないけど、歴史は私たちが作っていくんだ。

映画の中のヒロインにはみな簡単に夢中になるけど、現実のヒロインには気づかない。

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2020/11/7 深谷シネマ
呆然としている。
こんな放心状態になった映画、今まであったっけ…

映画が好きなので、単純に「海辺の映画館 キネマの玉手箱」というタイトルと、カオスでポップなポスタービジュアルに惹かれていた。
大林監督の映画は、恥ずかしながらひとつも観たことがない。
惜しくも遺作になってしまった今作。これは今観るしかないのでは。

調べてみたら、なかなか辺鄙な映画館ばかりやっている。
その中でぎりぎり行ける距離に「深谷シネマ」があった。埼玉県深谷市、深谷ねぎの深谷。

これまでこの映画館の存在すら知らなかったけれど、ここ、元酒蔵を使っていて、映画好きのおじさんが50歳でNPO法人として始めたミニシアター。見た目がレトロで最高。
しかも、大林監督に縁があるらしく、新作のたびに舞台挨拶もしているらしい。
めちゃくちゃ行きたくなってしまった。

電車と徒歩で片道2.5時間かかった。
1日1回上映だったので、このために早起きした、土曜なのに!偉いぞ〜自分。
到着したら、「海辺の映画館」の手描き垂れ幕がでかでかと!!すごい、なんだこれ。

さて、ようやく内容のレビューに。笑

まず、「なんか戦争のことを描いてるらしい」くらいの情報しか持たずに臨んだのだけど、もうね、冒頭から独特の世界観すぎて「え??え????え?????」って感じ、、、

こりゃやばいものを観に来てしまったぞと思いながら流れに身を任せていたけれど、ストーリーはどんどんカオスになっていく。
いつ置いてきぼりになってしまうかとヒヤヒヤした。3時間あるし。

映画の世界と現実世界が入り乱れていてなにがなんだか!もはや現実世界すらも現実世界ではない。むしろ私もこの映画の登場人物のひとりなのでは?という気分になってくる。洗脳か?これは。
これまで経験したことのないような展開の連続なので、飽きない。次に何がくるのか想定不可能。

それから、こんなに超有名俳優バンバン出てるんですか!?まじですごいな。次から次へと出てくるので驚きの連続。

半分以上はまさに「混沌」だった印象だけれど、後半徐々にストーリー展開がスマート(というか凡人にも流れが掴めるレベル)になってきて、最後の30分〜1時間くらいで一気に何がしたかったのかすべて理解できてしまった。そんな感覚。

「混沌」に感じられていた前半の映像の意味がストンと落ちてきた瞬間、もうわけがわからないまま涙が止まらなくなった。焦った。
悲しみでも喜びでもない。なんだこの涙は? 予想だにしなかったものすごい体験をした時、人って涙が出るんだ。。。


私たちは観客として席に座っているだけでいいのか?
違う。違う。違う。
私たちがつくるんだ。未来を。


私は最近、なぜ自分が、小説より漫画よりもドラマよりも「映画が好き」なんだろうかとよく考えていた。

映画はたった2~3時間に、人生、魂、大切なもの、生きる意味、そんなものが様々な手法で閉じ込められているからだと思う。
文字だけじゃない。視覚だけでもない。
音や映像や言葉が複雑に絡まりあって、一筋縄ではいかない感情を表現してくれるから。
本当に玉手箱みたいだ。

教科書で勉強するだけ、ニュースで見るだけでは全然理解できていなかった、世界中のいろんな物事が、自分の中に入ってくる。
だから映画はすばらしい。

そんなことを考えていたので、この映画が訴えかけてくるメッセージと自分の心がぴったり重なってしまって。
あんなに混沌としていたものの中に、こんなにぴったり重なるものが秘められていたなんて。

もうなんだか言葉では言い表せないのだけど、ものすごく「わかった」という感覚で、めちゃくちゃ気持ちが昇華された。

主人公(と呼んでいいのかな)の女の子がずっと「わからない、わからない」「だから映画に入る」「教えて」「助けて」と繰り返していたのだけど、混沌の3時間を経て、「わかった」と思ってしまった瞬間のスッキリ感、すごかった。本当に。
この映画には、私が映画を好きな理由がパンパンに詰まってる。

ただ、まぁとにかく半分以上カオスなので、人に安易に勧められないし、映画を愛している人じゃないとこの素晴らしさはわからないと思う。「なんかすごかった」で終わっちゃうと思う。前半で飽きてしまう人もいそうな危うさがある。(と、いう意味で -0.2。素晴らしさは文句なし5.0です。)
でも、きっとFilmarksユーザーなら…。

終映後にお手洗行ってる間も勝手に涙流れてたのでほんとすごかったです。
映画のパンフレット、初めて買ってしまった。
深谷駅でパンフレット眺めてたら涙でそうになった。

なんだか重みがすごくてもう一度観れる気がしないのだけど、パンフレットは繰り返し読んで想いを馳せることになると思う。
本当に素晴らしい作品を遺してくれて、ありがとう・・・・。

こんな長いレビューになってしまったのも初めてだ。笑
ねこみみ

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