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海辺の映画館―キネマの玉手箱のIdeonのレビュー・感想・評価

3.5
その日閉館を迎える尾道の海辺の映画館「瀬戸内シネマ」は、最後のオールナイト上映を行う。テーマは日本の戦争映画。希子をはじめとする映画好きの若者たちは揃って駆けつけるが、鑑賞しているうちに映画の世界に入り込み、白虎隊、幕末の志士たち、さくら隊など、戦争から逃れられなかった若者たちと生活を共にするうちに、戦争の醜さ、悲しさを知るのだった…というお話。
鬼才大林宣彦監督の遺作は純度100パーセントの反戦映画だった。ここ何作かはかなり反戦が色濃い作品だったが、それだけではなく、筋もかろうじてとれるものだった。しかし、膨大な数のテロップと説明で埋め尽くされ、合間に歌と踊りで進められるこの作品は、映画としては明らかに異形である。撮影技法は「ハウス」の頃に返って、役者は舞台に殆ど光学合成されている。セットはあからさまにセットと分かる安っぽいもので統一されている。冒頭に純文学映画と称されていたが、これは大林一座総出演の壮大な意見文である。監督の晩年がこんなにも反戦に凝り固まってしまったのは、やや残念だが、絵面は大林作品以外の何物でもないので、監督のラストを飾るのにふさわしい作品だった。
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