のこ

hisののこのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
4.0
ずっと見たかったやつをようやく。自分に関連するテーマだと傷付くのが怖くてなかなか観れなかったりする。

ドラマ版の高校生の頃の渚の雰囲気と性格が変わっててちょっと面食らう。もう少ししっかりした奴だと思ってたぜ!と思うくらい人として自分勝手な面がある。

だから立場に寄って(=おおよその人)は渚にイライラしてこの物語に感情移入出来ない気がする。でも、自分は偽装結婚してしまう気持ちも理解できる…。

自分もFTM(女→男)として、10代で性別に葛藤し始めてからしばらくはずっと「女の子」として自分を偽って生きてきた。世の中の偏見や差別を知る度に、親や社会は「偽ること」を求めてると思ってた。「自分らしさ」なんて諦めてたし周りのことを考える余裕もなくて。だけど、お通夜での迅や裁判での渚の言う通り、当事者自身がバイアスを持って世界を見ている側面は少なからずあるはず。その点は自覚している。

まだまだ偏見や差別は有るし、その問題を過小評価してしまうことを危惧している。だけど人の温もりも忘れてはいけないし、そして何より当事者が見ている世界が必ずしもイコールではないことを改めて覚えておきたい。

LGBTQ映画には社会的背景による葛藤や苦悩が付き物だけど、早く観る人に「こんな時代もあったんだね…」と思われるような社会に少しでもしていければ。
のこ

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