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シン・ウルトラマンの速のネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

アイデアは非常によかった。
怪獣は生物兵器で、真に恐ろしいのは知略に長けた星人、しかしもっと恐ろしい秩序的なものがウルトラマンの故郷の「正義」にある……。

だが、この終盤でカタルシスを得るには、その「正義」や「秩序」への対抗軸であるはずの、人間心理の描写がまるで足りない。

人間と融合して人間の心理を知ろうとしたウルトラマンの「だが何もわからない」という言葉に説得力がほしかった。ほぼ人間が無力なこの映画において、最大の「武器」はウルトラマンをして味方させたその人間心理の謎にあるはずだが、星人をとまどわせるような心理的不可解さのエピソードがないのだ。

むしろ、人間は、知略のある星人の思い通りに動かされている。ウルトラマンの知性や知略はそこを凌駕するほどのものがあって、それは面白いのだが、それは「わからない」ものではなく「わかる」ものの代表だろう。

人間の姿でのウルトラマンが、文化人類学などの書物を読んで理解しようとしている。だがそれだけでは、ただの「設定の説明」だ。

ウルトラマンが、戸惑い、不思議がり、それでも惹かれるような人間の姿を具体的に見せなければならない映画だった。この映画はそれが出来なかった。
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