けいすぃー

シン・ウルトラマンのけいすぃーのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
4.3
感情よりも思考を揺さぶる映画であった。様々な余韻を残す。
展開が急で各キャラクターの感情の醸成、それに伴った行動の必然性が希薄に感じたことはいったん度外視して感想を述べたい。そもそも、冒頭で世界観を伝えるためにモンタージュ的な手法を取ったのをみるに、上記のことを承知の上での制作だと考える。
それでも完成度は極めて高い作品と思う。

まずは音楽・視覚効果の点で、温故知新ともいうべき、レトロな感覚と最先端の技術を織り交ぜていたことに好感を持った。

撮影に関して、実験的な面白いカットが多々みられた。
最初のスペシウム光線を打つショットは、予告編から魅力的に映った。
カメラは常に忙しなくポジションを変え、かなり急な角度や、四隅や狭い空間に人物を閉じ込めたショットが印象的だった。これは登場人物の錯乱や心理的孤立性を効果的に表していたと思う。エヴァンゲリオンにおけるカットワークを彷彿させた。
劇後半、窮屈なアングルに人物を閉じ込めていたカメラが、それまで切り返しの反復を翻し、ダイナミックに2人の人物を収めるポジションに移動したのは、その後のチームとしての心理変化の転換点になっていたのだろう。

主題については咀嚼しきれていない部分が多い。
まず、シン・ゴジラとシン・ウルトラマンの決定的な違いは、ゴジラは人間と意思疎通の取れない"非人間的"存在であったのに対し、ウルトラマンは人間としての面を持った意思疎通の可能な存在であった点だ。
劇前半に於いてウルトラマンの心理描写や行動原理を理解する術がほぼ皆無だったのに、後半にかけて異星人やチームメンバーとの対話を通してそれが顕になっていってことを鑑みても、人間と超人間的存在の間での揺らぎを追うことは、重要なテーマのひとつであったと認識できるだろう。

主題歌に関して、予告編では米津玄師というチョイスもメロディもミスマッチな感覚が拭えなかった。しかし最後まで辿り着いてみると、歌声、音、全てを取っても文句のない出来栄えに感じた。

以下、あからさまなネタバレが含まれるので、未視聴の方はご留意頂きたい。

ラストシーン、ウルトラマンと神永の精神は分離され、神永は意識を取り戻したが、彼の記憶や今後の運命はどのようになったのだろうか。表情を写さなかった点も、良い余韻を作り出していた。

また、劇中、ウルトラマンと斎藤工の口元が酷似していることに気が付いた。俳優の役作りに脱帽である。
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