平田一

シン・ウルトラマンの平田一のレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.9
“空想と浪漫
そして、
友情”


世界中で話題を集めた傑作映画『シン・ゴジラ』のスタッフ陣が再集結した「ウルトラマン」新バージョン。国民的人気シリーズ「ウルトラマン」第一弾を企画当初のコンセプトに立ち戻るという試みで、人智を越えたウルトラマンと人類を追いかける。『シン・ゴジラ』で監督と特技監督を兼任した樋口真嗣さんがここでは監督の方に徹し、総監督と脚本を兼ねた庵野秀明さんがこちらでは企画・脚本として監督をサポート。

巨大不明生物「禍威獣(かいじゅう)」が出現し被害が拡大する日本。その時、空から出現した謎に満ちた光の巨人。彼は、ウルトラマンとは、敵か味方なのか?

岡本喜八イズムを軸に構成した(と雑誌にあった)『シン・ゴジラ』と打って変わっていましたね。というのもゴジラの方は、官僚制度の限界点と、未知の事態の対処につながるプロセスの確立などが大きな要になっていて、ゴジラにかつてなかったほどのリアリティーを与えました。3・11に原爆の恐怖も内包させるという、社会派要素も盛り込んでたのも個人的にはオススメで、販売初日にBlu-rayを買うほど僕は大好きです!

今回のウルトラマンも同じ布陣が集っているなら、必然的にそっちに寄せてくものだと思っていましたが、結論から言ってしまうと半分は当たりです。

禍威獣とウルトラマンのバトルは流石の迫力ですし、特撮もので大作映画でこれほど現実味を出せた(宇宙人やSF要素は大概チープな日本がです)。宇宙人にも主義主張があるのをしっかり踏まえてる。単なる悪役サイドでないとしたのが面白かったです。だからメフィラス、ゾフィーにおいてもチープさは感じられず、むしろそういう描き方があったのか!って歓喜です。

特にメフィラス星人は話題になるのも納得です。あれほどまで宇宙人に真実味を与えた上に、魅力あふれるキャラクターを体現したのは圧巻です(居酒屋でウルトラマンと語り合ってるのが特に)! 演じる山本耕史さんは最早今年の顔では!? 「鎌倉殿の13人」もホントに素晴らしいですし。

加えて『シン・ゴジラ』とは明確な差異がある。それだけでもこの映画を見た甲斐はありました。

その差異とは感じる人もいたでしょうが“懐かしさ”。
舞台は今でも、懐かしさを主軸にしたのがお見事です。

私見ですが当時の人は、未来は明るいものであり、きっと今より素敵な世界が広がっていると信じてて、争いはなくなって、互いに手を取り合っている……。そんな未来を夢想していた人が多いと思ってます。この『シン・ウルトラマン』はその頃の懐かしさ、未来に希望を見出すことを、もう一回信じてみない?と見る人に言ってるようにボクからは見えました。ウルトラマンが掟を破って人類の味方をし、自分の命も顧みずに、最後まで挑んでく。けどそれは人類が立ち上がってこなければ、彼からも見捨てられるという現実が常である……人類が自分で考え、行動しなくちゃ意味がない。これはまさに今の時代にリンクしていると感じます!

ですがちょっと残念なのが物語の「構成」です。

これは映画の良さでもあり、欠点でもあるんですが、まるで初代ウルトラマンのダイジェストみたいです。

要するにこの映画、初代ウルトラマンにおける内容を2時間でまとめているも同然で、だからかキャラの感情がおざなりになってします。言うても『シン・ゴジラ』でもそういうのはありました。ですがそこを台詞が補い、代弁する機能も兼ねて、うまくそこを切り抜けている印象はありますし、キャラクターに愛着さえも抱いていきました。ところがこちらは肝心のキャラクターが何とも薄く、名前どんなだったっけ?ってぐらいの印象度合いです。もうほとんど役者名でインプットをしてるから、キャラ名とか出されたときにはどちら様?ってぐらいですw おそらく樋口監督は台詞というのを状況説明特化に費やしたいのかな? 人間ドラマを描くところは苦手なのかもしれません(必ずしもそれが悪いわけではないんですけどね)。

確かにこれは賛否両論なのは大いに納得です。ボクも見ていて「オヤッ?」と感じる瞬間はありました。ですが凡小な大作や安全パイの映画より、こういった挑戦心に溢れた映画は歓迎です。ていうかこっちのほうが絶対面白いですよ。現に書いてて好きな場面はたくさん思い出せますし。

次なる「シン・シリーズ」は『シン・仮面ライダー』か。池松壮亮さんが主役で、浜辺美波さんがヒロイン。こちらも初代未見なので、どんな映画か楽しみです!
平田一

平田一