朝田

1917 命をかけた伝令の朝田のレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.7
とにかくロジャー・ディーキンスが凄すぎる。これに尽きる映画。プロット自体は伝令を受けた兵士がひたすら目的地を目指すという極めてシンプルなもの。それを美しく、滑らか過ぎる編集によって、圧倒的な緊張感を持続させ続ける。全編疑似ワンカットというような先鋭的な手法を用いた作品は、ともすれば単調になりそうなものだ。舞台もキャラも変化させようがないし、省略して時間を飛ばす事も出来ない。しかし、今作は要所要所に陰影の効いた強度のあるショットを入れる事で全く飽きさせない。終盤の夜間の撮影などはほとんど「ブレードランナー2049」のようなライティングが用いられており、悲惨な戦地を捉えたシーンでありながらどこか近未来的なムードすら漂うスタイリッシュさがある。音楽の使い方も含め、音響設計も素晴らしい。常に不穏かつ重低音の効いたスコアが流され続けるが、時折まったくの無音になる事で思わず耳を済ませてしまう。その瞬間に生々しく弾が打ち付けられる音が流されたりと、音の使い分けが非常に巧み。戦地に居合わせるような恐怖感が与えられる。戦争映画というよりも、もはやホラー映画である。物語よりも、撮影と編集こそが映画には重要なのだという事を改めて強く認識させられる。全編疑似ワンカットという手法には「バードマン」という前例もあるため新鮮でもないし、もはやサム・メンデスの作家性など一切見えてはこない作品ではあるが、間違いなく今年一番劇場で体感すべき映画。
朝田

朝田